安祥寺「五智如来坐像(ごちにょらいざぞう)」
京都・安祥寺の「五智如来坐像」は、5体の如来像から構成される国宝であり、元々は安祥寺の多宝塔に安置されていました。明治39年(1906年)の火災の直前に京都国立博物館に寄託されたことで、焼失を免れ、現存する最古の五智如来像として重要な文化財となっています。
基本情報
- 台帳名:「木造五智如来坐像」
- 日本に現存する五智如来像の中で最古の重要文化財であり、国宝に指定
- 構成:大日如来を中央に置き、他の四仏(不空成就如来、阿弥陀如来、宝生如来、阿閦如来)が揃った5体セット
- 金剛界曼荼羅の中心となる五仏の教義を体現
- 顔がぽっちゃりとした愛らしい表情が特徴的
- サイズ:中央の大日如来は約158.6cm、他の4体は106〜109cm
- 国宝指定番号:201-3507
- 所蔵施設:京都国立博物館(京都市東山区)
- 所有者:吉祥山 宝塔院 安祥寺
- 時代:平安時代(約850年頃の制作)
- 技法:木造乾漆(木造に乾漆を盛った技法)
京都国立博物館の1階で公開されることが多い。
宗教的な役割と象徴的意味
五智如来は、密教の金剛界曼荼羅における中心的存在で、それぞれが悟りの智慧(五智)を象徴しています。これらの像が代表する如来は、完全に悟りを開いた存在であり、一切の煩悩や苦しみから解脱した理想的な仏の姿を示します。
- 大日如来:宇宙の根源的真理・智慧の中心
- 不空成就如来、阿弥陀如来、宝生如来、阿閦如来:大日如来の智慧の5つの側面を体現
これらの仏像は、信者にとって精神的な導きや守護の存在であり、宇宙観や悟りの道を象徴的に示す役割を果たします。
この五智如来の教えは、密教の真髄である「全てのものは智慧を通じて一体である」という理念を信者に伝えています。
(※智慧とは…知識だけでなく、それをどのように理解し、どう活かすか、さらに真理を見出して苦悩を超える力も含めた、深い知性や洞察力のこと)
歴史と由来
- 多宝塔火災前に京都国立博物館に寄託され、焼失を免れたことは奇跡的なエピソードです。
- 東寺の五智如来像は焼失後再制作されたため、安祥寺像が最古の五智如来像として重視されています。
- 入唐僧「恵運」の存在が安祥寺と東寺の密教仏像群の歴史的背景を深めています。
東寺との違い
- 安祥寺の五智如来像は平安時代のオリジナル、国宝指定
- 東寺では焼失したため再制作、現存するオリジナルはなし
- 東寺では五大菩薩像・五大明王像が密教仏像として有名
京都・東寺の五智如来(立体曼荼羅)について詳しく知りたい方はこちらもおすすめ👇
配置と特徴

- 右端:阿閦如来(あしゅくにょらい)【東方】怒りの表情で煩悩を打ち砕く存在
- 右中:宝生如来(ほうしょうにょらい)【南方】清らかな智慧を象徴する
- 中央:大日如来(だいにちにょらい)【中心】すべての仏の根源、宇宙の真理そのもの
- 左中:阿弥陀如来(あみだにょらい)【西方】慈悲をもって人々を救う
- 左端:不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)【北方】願いを実現へと導く力
密教曼荼羅の形式に従った配置で、現在の展示では横一列で並べられることが多いです。
寺院での拝観情報
- 場所:安祥寺(京都市山科区)
- 特別拝観日:年数回(例:1月、4月、5月などの指定日)
- 拝観料:大人500〜700円程度
- 注意点:撮影禁止エリアに注意
- 体験:写経・写仏体験あり(要予約)
- 仏像の拝観:※「五智如来坐像」は京都国立博物館にて公開が一般的
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拝観日程やイベント内容など、最新情報は公式サイトでご確認ください👇
基本的な参拝方法(寺院の一般作法に準ずる)
- 境内の手水舎で清める
- 本堂や礼拝所で軽く合掌し拝礼
- 境内内を静かに参拝し、特別拝観の際は案内に従う
- 心静かに像の由来に思いを馳せお祈りする
参拝の感想

私は京都国立博物館の特別展「日本、美のるつぼ」で五智如来坐像にお会いしました。
スポットライトに照らされて、静かに金色に輝く5体の仏像は、統一感と神々しさがあり、見ているだけで心が落ち着きました。優しい表情と丸みを帯びたお顔立ちは、観ている私もホッコリする気持ちになりました。お顔だけで見分けるのが難しいぐらいみなさんそっくりで整ったお顔でした😊
ご縁があり、こうした貴重な御仏像にお会いすることが出来て嬉しかったです🙏✨
▶︎あわせて読みたい:京都国立博物館「日本、美のるつぼ」後期展示レポート
博物館で仏像を鑑賞する魅力
寺院での拝観とはまた違った魅力があります。
博物館で鑑賞するメリット7選
- 至近距離で細部まで見られる
- 複数の仏像を一度に鑑賞できる
- 天候や季節に左右されない
- 照明・展示演出によって表情が際立つ
- 撮影可能な場合もある
- アクセスやバリアフリー対応が整っている
- 精神的な癒しや感動を得られることも
仏像初心者の方にもおすすめです。一度にたくさんの仏像と出会えるチャンスがあります✨
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京都国立博物館では、仏像がシンプルに展示され、彫刻そのものの造形美を味わえる配置となっていました。
▶︎ 仏像の魅力は「展示方法」にあり?同じ仏像でも見え方が変わる不思議とは?
みなさんも京都奈良へ行く際は、ぜひ京都国立博物館の展示スケジュールをチェックして、貴重な御仏像たちに会いに行ってみてください😊
おわりに|仏像を通して心にふれる時間を
仏像の世界は、本当に、奥深くて、美しくて、人の心に静かに響くものだと思います。
そこには、言葉にしきれない感動や、目の前の仏像から伝わってくる優しさ、強さ、そして静けさがあります。
それを理解できる人は少ないかもしれないけれど、私が発信し続けることで、「なんかいいかも」って思ってくれる人が、きっと少しずつ増えていくーーー
仏像の魅力を、もっともっと、世の中に伝えていけますように🙏✨
そんな思いを込めて、このブログを書いています😊
🇺🇸 English Summary
The Five Wisdom Buddhas of Anshō-ji Temple: Japan’s Oldest Surviving Gochi Nyorai Statues
Summary:
Anshō-ji Temple in Kyoto is home to a remarkable set of five seated Buddha statues, known as the Gochi Nyorai (Five Wisdom Buddhas), designated as National Treasures of Japan. These statues, crafted in the early Heian period (9th century), represent the five aspects of Dainichi Nyorai—central to Esoteric Buddhism. Each Buddha embodies a specific wisdom and symbolic direction, forming a mandala that visually conveys the cosmic truth of the universe. These sculptures are the oldest known surviving examples of the Five Wisdom Buddhas in Japan. While usually kept out of public view, they are occasionally exhibited at special events, such as at the Kyoto National Museum. The article explores their artistic features, religious significance, and the powerful presence they emanate, offering a rare glimpse into the spiritual heart of early Japanese Mikkyō (Esoteric Buddhism).