京都・東山にある泉涌寺(せんにゅうじ)は、
皇室ゆかりのお寺として、どこか特別な静けさが漂う場所です。
その中で、ひときわやわらかな存在感を放つのが、
美人祈願で親しまれている「楊貴妃観音像(ようきひ かんのんぞう)」と、
穏やかに佇むご本尊である運慶作と伝わる「釈迦・阿弥陀・弥勒の三尊仏」です。
この記事では、楊貴妃観音像と三尊仏の魅力や歴史・造形美を分かりやすく説明します。
京都でゆっくり過ごしたい方へ
仏像に会いに行く旅は、移動も含めて大切な時間です。
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楊貴妃観音像とは|“美仏”と讃えられる理由
仏像の種類や造形の見どころを知っておくと、楊貴妃観音や三尊仏もより深く楽しめます。
▶ 初心者でも分かる仏像の種類と魅力まとめはこちら

泉涌寺の中でも、とくに多くの人を惹きつけてきたのが
楊貴妃観音像(ようきひかんのんぞう)です。
唐の絶世の美女・楊貴妃になぞらえて呼ばれている、とても貴重な観音さまです。
- 重要文化財指定
- 正式名称:楊柳観音(ようりゅうかんのん)
- 像高:約114cmで、等身大の坐像
- 素材:香木の白檀
- 繊細な彩色が施されている
- 豪華な山形宝冠や練り物の頭髪が特徴
- 作者:不詳
繊細な彩色が施された衣、豪華な山形宝冠、丁寧に作られた頭髪など、
その姿はどこを見ても優雅でやわらか。
作者は分かっていませんが、見る人を魅了する美しさが宿っています。
この観音さまは、1230年に湛海律師が中国・南宋から請来したと伝わっています。
衣のひだの表現(衣文)には唐時代の雰囲気が色濃く残り、
異国的でありながら不思議と心が落ち着く、やさしい表情を見せてくれます。
その美しさから「美人祈願」「良縁祈願」「安産祈願」の仏さまとして、
女性の信仰を集めてきました。
長く秘仏として大切に守られてきましたが、現在は一般に拝観することができます。
造形に宿るやわらかな慈しみ
楊貴妃観音像の衣文は、肌にすっと寄り添うようなやわらかさがあり、
唐時代の美意識をよく伝えています。
曲線が美しく、観音さまの穏やかな慈悲がそのまま形になったようです。
ふくよかで安定した体つきは、天平・唐風の仏像の特徴が感じられ、
泉涌寺の静かな空気と重なりあって、時代を超えた気品をまとっています。
【筆者感想】
実際に拝観してみると、想像していたよりも少し小ぶりで、色彩はやさしく華やか。
表情はとても柔らかで、そっと寄り添ってくれるような雰囲気がありました。
“楊貴妃の面影をうつした”と伝わるのも納得の美しさでした🙏✨
祈りの時間は「心の美しさ」を育ててくれる
楊貴妃観音を前にすると、不思議と時間の流れがゆっくりになりました。
「祈願すると身も心も美しくなれる」と伝わる観音さまですが、
それは外見の美しさだけではなく、
“自分を大切にする気持ち”を育ててくれるという意味なのだと感じました。
華やかな名前から想像する印象とは違い、表情はどこか静かで、
見る人の心の状態をそのまま映し出すようでした。
観音さまの前に座ると、自然と呼吸が深まり、心がふわっと軽くなるような
――そんな優しい時間が流れます。
あなた自身のペースで、静かに祈りを届けたくなる、そんな仏さまです。
三尊仏(釈迦・阿弥陀・弥勒)|三つの穏やかさが並ぶ空間

泉涌寺で忘れてはいけない見どころが、仏殿の中央に安置されている「三尊仏」です。
中央に釈迦如来、左に阿弥陀如来、右に弥勒如来が並び、
**過去・現在・未来を象徴する“三世仏”**として祀られています。
- 重要文化財
- 本尊
- 針葉樹材の寄木造
- 衣部は黒漆に金箔、肉身部は弁柄漆塗りと金泥仕上げ
- それぞれ約100cm前後の等身大サイズ
- 作者:運慶(?)
三尊の意味
- 阿弥陀如来(左):過去をつかさどる仏さま。極楽浄土の教主として知られる存在。
- 釈迦如来(中央):私たちの“今”を導く現在の仏さま。お釈迦さまそのもの。
- 弥勒如来(右):未来に現れるとされる仏さま。56億7千万年後に衆生を救うと伝えられています。
運慶作と伝わる“品格ある三尊”
この三尊仏は名仏師の運慶(うんけい)の作と伝わり、
寄木造で丁寧に仕上げられた等身大の坐像です。
針葉樹材を素材とし、衣の部分は黒漆に金箔、
からだの部分は弁柄漆や金泥で仕上げられています。
落ち着いた輝きを放つ金箔、温かみのある朱色の肌、
そしてやわらかく整った輪郭――
どれをとっても均整のとれた美しさがあります。
須弥壇の上には光背や天蓋が荘厳に飾られ、仏殿全体を“静かな聖域”へと変えていました。
しばらく見つめていると、三尊のまわりだけ空気が澄んでいるように感じられます。
※「運慶作」と伝えられていますが、現在の研究ではあくまで伝承であり、
確実に運慶本人の作と断定はされていません。
「誰が作ったか」と問われれば、寺伝では運慶とされるが、
現在は「伝・運慶作」とみなされている、と理解するのが実情です。
三世が揃う希少な空間
三世仏が三尊そろって祀られている寺院は、日本でもそれほど多くありません。
三尊として並ぶことで、それぞれの仏さまの役割や距離感も感じやすくなり、
「守られている」というよりも「そっと寄り添ってくれる」存在に近いと感じました。
これは泉涌寺ならではの尊い空間であります。
それぞれ約100cm前後の等身大で、私たちと同じ目線で坐しておられるような
親しみを感じられるところも魅力です。
仏像に詳しくなくても、理屈より先に心が反応する体験ができる場所です。

そして仏像の中でも、今なお多くの人の心を惹きつける存在の一尊が、
奈良・興福寺の阿修羅(あしゅら)像です。
▶ 阿修羅像の表情・造形・魅力を初心者にもわかりやすく解説した記事はこちら
楊貴妃観音のように、ストーリー性を持つ仏像は、仏像鑑賞が初めての方にもとてもおすすめです。▶ 【初心者でも楽しめる】如来・菩薩・明王・天部の特徴や見分け方
静かで内面的な魅力を持つ楊貴妃観音とは対照的に、力強く写実的な表現で知られる仏師・運慶の仏像も、また違った感動を与えてくれます。
▶ 仏師・運慶とは?代表作と実際に会える寺院を解説
体験談とまとめ|泉涌寺で出会う、美しさと静けさに寄り添う時間
泉涌寺を訪れた日は、人が少なく、境内にはやわらかな静けさが広がっていました。
まず楊貴妃観音像の前に立った瞬間、その美しさと優しい表情に心がふっと緩み、
「来てよかった」と思える安心感に包まれました。
しかし、予想以上に心に残ったのは、仏殿に静かに坐す三尊仏との出会いでした。
釈迦・阿弥陀・弥勒の三尊が並ぶ空間には、
過去・現在・未来がひとつに溶け合うような穏やかさがあります。
その前に座っていると、時間がゆっくりほどけていくようで、
自然と呼吸が深くなるのを感じました。
泉涌寺は、華やかな観光地とは少し違い、自分のペースで仏像と向き合える貴重な場所です。
楊貴妃観音像の美しさ、三尊仏の静かな存在感、
そして広々とした境内や庭園の落ち着いた空気
――すべてが調和して、心を静かに整えてくれます。
「心を整えたい」「自分を大切にしたい」
そんな気持ちをそっと受け止めてくれる、やさしいお寺。
女性のひとり旅にもぴったりで、思わぬ気づきや心の変化に出会える場所だと感じました。
また会いに行きたいと思える、穏やかな余韻が残る旅になりました。
広くて美しい境内をゆっくり歩く時間も、また格別でした。
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泉涌寺(せんにゅうじ)|基本情報とアクセス
寺号の由来にもなった清泉が今も湧き出ており、格式と静けさを兼ね備えた特別な空間です。
- 所在地:京都市東山区泉涌寺山内町27
- 正式名称:総本山 御寺 泉涌寺
- 拝観時間:3月〜11月9:00~16:30 (閉門17:00)
/12月〜2月9:00~16:00 (閉門16:30) - 拝観料金:伽藍拝観 大人500円 / 小中学生300円
詳しい情報や、拝観時間・最新情報は、▶︎ 泉涌寺の公式サイトでご確認ください。

🚌 アクセス情報(公共交通)
- JR「東福寺駅」から徒歩20分
- JR「京都駅」から市バス202または208系統で「泉涌寺道」下車、徒歩約15分
京都駅の八条口(京都タワーの反対側)からバスに乗り約30分、さらに徒歩で約15分。
バス内は混雑していましたが、泉涌寺は観光客が少なく、京都駅から近いとは思えない静けさで
まさに「穴場」といった雰囲気でした。

⛩️ 周辺のおすすめ寺社仏閣|東福寺
泉涌寺から徒歩圏内:紅葉の名所「東福寺」の参拝もオススメです。
京都の旅で心に残る仏像との出会いを
京都は、四季折々に表情を変える街並みと、歴史ある寺院や仏像が息づく場所です。春の桜、夏の青もみじ、秋の彩り、冬の静けさ──どの季節にも、それぞれの魅力があります。寺社を訪れるたびに、時の流れとともに変わる景色と、変わらない祈りの姿に心が整うことでしょう。
普段は非公開の仏像や特別拝観の機会も多く、歴史や信仰に触れながら深く心に残る時間を過ごせます。訪れる際は、拝観料や公開期間を事前に確認し、公共交通機関を利用することでスムーズにアクセスできます。人が少ない時間帯を選べば、より静かに仏像と向き合うことができるでしょう。
どの季節も、それぞれの光と空気の中で仏像と出会える京都。日常から少し離れて、心を整える旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
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※本記事内の写真は筆者が撮影したものです。

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