京都府木津川市の浄瑠璃寺(じょうるりじ)には、
平安時代に建てられた九体阿弥陀堂のなかで、ただひとつ今に残る本堂があります。
2025年12月10日、秋の特別開扉が終わった数日後に訪ね、九体の阿弥陀さまの前で
1時間ほど過ごしました。
そのあいだ参拝の方は数組だけで、じっくり、ゆっくり向き合うことができました。
この記事では、九体阿弥陀堂と、極楽浄土を模した庭園の見どころ、
そして会えなかった秘仏・吉祥天女像のことをまとめます。

結論:仏さまとゆっくり向き合いたいなら、浄瑠璃寺は人の少ない時期がおすすめ
・本堂は、平安時代の九体阿弥陀堂として唯一残るお堂(国宝)
・池の東に三重塔と薬師如来、西に本堂と阿弥陀如来。
庭園そのものが浄土を表しています
・秘仏・吉祥天女像は年3回だけの開扉。1月1日〜1月15日・3月21日〜5月20日・10月1日〜11月30日
係の方によると、秋より春のほうが少しすいているそうです
浄瑠璃寺の九体阿弥陀堂とは|平安時代から残る、ただひとつのお堂
浄瑠璃寺は「九体寺(くたいじ)」とも呼ばれ、本堂は九体の阿弥陀如来を祀る
阿弥陀堂として国宝に指定されています。
平安時代の後半には、貴族の願いを受けて九体の阿弥陀如来を祀るお寺が
数多く建てられたといわれていますが、その時代の阿弥陀堂で今も残っているのは、
浄瑠璃寺の本堂だけです。

お寺の始まりは永承2年(1047年)。
最初は寺の名前のとおり、浄瑠璃世界の主である薬師如来をご本尊としていました。
保元2年(1157年)に本堂を池の西側に移し、そこから阿弥陀如来を祀る今の本堂へと
形を変えていきます。
横に長いお堂の中には、中央に大きな中尊(高さ約221cm)、その左右に4体ずつ、
ひとまわり小さな阿弥陀さま(平均約141cm)が一列に並んでいます。
中尊は来迎印(らいごういん)、ほかの8体は弥陀定印(みだじょういん)と、
手の形も違います。
九体という数は、お経『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』にある
「九品往生(くほんおうじょう)」によるものです。
人が極楽に生まれるときには、生き方や心がけによって9つの段階がある、
という考えで、その9つに合わせて九体の阿弥陀さまを祀っています。

九体の阿弥陀さまと、1時間向き合って
九体阿弥陀は、明治の終わり以来、約110年ぶりとなる修理が5年かけて順番に行われ、
2023年(令和5年)の春にすべて終わりました。
九体そろったお姿にお会いできたので、嬉しかったです。
黄金色に輝く九体のお姿。よく見ると、お顔は一体ずつ少しずつ違います。
胸に刻まれた卍(まんじ)のしるしも、印象に残りました。
参拝のときにいただいたパンフレットによると、修理の際に、一体ごとに作った仏師が
違うとみられる跡が見つかったそうです。お顔や衣のひだの様子が微妙に違うのは、
そのためかもしれません。

私が訪れたのは秋の特別開扉が終わって数日後で、紅葉も終わりかけでした。
私自身は紅葉にはあまり興味がなく、会いたい仏さまにゆっくり向き合いたかったので、
ちょうど良かったです。1時間ほど本堂にいたあいだ、参拝の方は数組だけ。
じっくり、ゆっくり向き合えたので、満足しています。
冬の本堂は、足もとから冷える
この日はぐっと冷え込んだ1日で、浄瑠璃寺では息が白くなるほどでした。
係の方も「寒い…」と声をもらすほど。本堂の床はとても冷たく、靴下一枚だった私は、
足もとから冷えを感じました。
すでに1時間いましたが、もう少し暖かければ、もっと仏像群を見ていたかったです。
冬に訪ねるなら、厚手の靴下を重ねてはくなど、足もとの冷え対策をしておくと、
もっとゆっくり向き合えると思います。
ちなみに、係の方に「夏は涼しいですか?」と聞いてみると、「自分ではそんなに涼しく
感じないけれど、参拝の方は涼しいと言っています」とのことでした。

九体の阿弥陀さまだけじゃない|四天王と3つの秘仏
本堂に入ってすぐのところに安置されていたのが、四天王像のうちの2体、
持国天と増長天(国宝)です。截金(きりかね)の模様が美しく、彩色も残っていて色鮮やか。
あまりに美しくて見入ってしまい、なかなか九体の阿弥陀さまのところまで
たどり着けませんでした。
九体の阿弥陀さま以外にも、こんなに魅力的な仏像があるとは思っていませんでした。
四天王を「美しい」と感じた、印象に残る像です。
四天王の残りの2体は、多聞天が京都国立博物館、広目天が東京国立博物館に出ています。

浄瑠璃寺の3つの秘仏と開扉日
浄瑠璃寺には、有名な秘仏・吉祥天女像のほかにも、秘仏の薬師如来と大日如来が
安置されています。いつか直接お会いしたい仏さまたちです。
- 吉祥天女像(重要文化財・本堂):1月1日〜15日、3月21日〜5月20日、10月1日〜11月30日
- 薬師如来坐像(重要文化財・三重塔):毎月8日、春・秋の彼岸の中日、1月は1〜3日と8〜10日(いずれも天気のよい日に限る)
- 大日如来像(灌頂堂):1月8日・9日・10日の3日間
※開扉日は、参拝のときにいただいたパンフレット(2025年12月)に書かれていたものです。
変わることもあるので、お出かけ前に確かめてください。
極楽浄土を模した庭園|東の三重塔から、西の阿弥陀堂を拝む
浄瑠璃寺の庭園は、池を真ん中にして、東に三重塔と薬師如来、
西に本堂と九体の阿弥陀如来が向き合う形に整えられています。

保元2年に本堂を池の西側に移したとき、池の向こう岸から阿弥陀さまを
拝めるようにしたと伝えられています。庭園は国の特別名勝・史跡に指定されています。
パンフレットによると、東の薬師如来は、現実の苦しみを救い、西の浄土へ
送り出してくれる仏さま。西の阿弥陀如来は、極楽浄土へ迎えてくれる仏さまです。
昔の人は、池の東側の「此岸(しがん)」から、向こう岸の「彼岸(ひがん)」にいる
阿弥陀さまに、お迎えを願って手を合わせていました。
春分・秋分の「彼岸の中日」には、三重塔の前から池越しに見ると、
太陽が九体の中尊の後ろへ沈んでいくのだそうです。
私も池のまわりを歩き、三重塔の側から本堂を眺めました。
池の向こうに横に長い本堂が建つ姿は、写真にも残しています。
三重塔の薬師如来は、毎月8日などに公開
三重塔(国宝)は、治承2年(1178年)に京都から移されたと記録に残る、
高さ16mほどの小ぶりな塔です。中には、浄瑠璃寺のはじめのご本尊である
秘仏・薬師如来坐像(重要文化財)が祀られています。

扉が開くのは、毎月8日、春・秋の彼岸の中日、1月は1〜3日と8〜10日で、
いずれも天気のよい日に限られます。
私が訪れた12月10日は扉が閉じていて、お会いできませんでした。
薬師如来にも会いたい方は、この日に合わせて訪ねてみてください。
秘仏・吉祥天女像に会うなら|係の方のおすすめは春
本堂には、美と幸福の女神として名高い秘仏・吉祥天女像(重要文化財)も祀られています。
鎌倉時代の建暦2年(1212年)に、この本堂に祀られたことが記録に残っています。
お会いできるのは、年3回の開扉の期間だけです。
- 1月1日〜1月15日
- 3月21日〜5月20日
- 10月1日〜11月30日
私は秋の開扉が終わった数日後に訪ねたので、お会いできませんでした。
ただ、吉祥天女像の入っている厨子(ずし)は、九体の阿弥陀さまと並んでいて、
見ることができました。

係の方によると、秋の開扉はとても混み合うそうで、「春のほうが少しすいているのでおすすめ」
と教えてくださいました。開扉の期間は、参拝のときにいただいたパンフレット
(2025年12月)に書かれていたものです。
変わることもあるので、お出かけ前に浄瑠璃寺(0774-76-2390)で確かめてください。
浄瑠璃寺の拝観情報
- 住所:京都府木津川市加茂町西小札場40
- 拝観時間:9:00〜17:00(3月〜11月・本堂の受付は16:30まで)
/10:00〜16:00(12月〜2月・本堂の受付は15:30まで) - 本堂拝観料:500円(中学生以上)
- 私の滞在時間:本堂で約1時間+庭園の散策
※拝観時間・拝観料は、浄瑠璃寺の文化遺産サイト「JORURIJI LENS」の情報です
(2026年10月時点)。仏像や庭園の説明は、このサイトと、参拝のときにいただいた
パンフレットをもとにしています。

奈良駅からは、JRで加茂駅へ行き、コミュニティバスに乗り換えます。
乗り換えの流れやバスの時刻は、こちらにまとめています。
▶︎ 浄瑠璃寺へのアクセス方法|奈良駅から電車+バスで迷わず行く
この日は、同じ当尾(とうの)の里にある岩船寺にも参拝しました。
2つのお寺をあわせて回る流れは、こちらの記事に書いています。
▶︎ 浄瑠璃寺・岩船寺を一泊で巡る|当尾エリアの仏像旅プラン【奈良発】
▶︎ 岩船寺アクセス完全ガイド|奈良駅から電車+バスで迷わず行く方法
まとめ|仏さまとゆっくり向き合える、浄土のお寺
浄瑠璃寺は、平安時代の九体阿弥陀堂がただひとつ残るお寺です。
池をはさんで三重塔と本堂が向き合う庭園を歩き、九体の阿弥陀さまの前で
ゆっくり過ごす時間は、私にとって満足のいくものでした。
いつか、吉祥天女像にもお会いしたいです。

阿弥陀如来と極楽浄土の庭なら、宇治の平等院鳳凰堂もあわせて読んでみてください。
阿弥陀さまの見分け方は、如来の記事にまとめています。
▶︎ 平等院鳳凰堂|見どころ・内部拝観・鳳翔館を体験レポで解説【京都・宇治】
▶︎ 如来の種類と見分け方|釈迦・阿弥陀・大日如来を京都奈良で巡る
