京都・萬福寺|羅怙羅尊者像の特徴と魅力を分かりやすく解説

仏像の種類と特徴

一度見たら忘れられない仏像「羅怙羅尊者像」

仏像好きの間ではよく知られている名作、羅怙羅尊者像(らごらそんじゃぞう)
私はこれまでに、宇治の黄檗山萬福寺と、京都国立博物館の「日本・美のるつぼ」展で、2度お会いしました。

初めて見たときの衝撃は強烈で、「え?どういうこと?」と足が止まりました。
しかし、羅怙羅尊者という人物の背景や、像に込められた意味を知ると、この独特の表現にも深い理由があることがわかります。

この記事では、その魅力と鑑賞ポイントを仏像初心者でも分かりやすく解説します。

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羅怙羅尊者像とは?|萬福寺に伝わる十八羅漢像のひとつ

羅怙羅尊者像は、**京都府宇治市の黄檗山萬福寺(おうばくさん まんぷくじ)**に伝わる「十八羅漢(じゅうはちらかん)」の1体です。

萬福寺は中国から伝わった黄檗宗のお寺で、
この像は 中国仏教美術の雰囲気を色濃く残す珍しい仏像 としても知られています。

造形の特徴|胸を開き、中に仏(釈迦)を見せる姿

最も大きな特徴は、
尊者が自分の胸(腹部)を両手で開き、その中にお釈迦さまの顔を見せていること。

文字だけ聞くと少し衝撃的に思えますが、実際の像はとても品格があり、写実性と芸術性の高さに圧倒されます。

  • 大きな耳環(じかん)
  • 繊細な文様の彩色
  • 水晶を使った瞳の表現
    など、細部まで丁寧に作られており、グロテスクさよりも神秘性の方が強く印象に残ります。

表現の意図|「心の中に仏がいる」という禅の教え

胸を開いて仏を見せる姿は、
「人は誰でも心の中に仏性(ぶっしょう)を持っている」
という仏教の核心を表したもの。

禅宗では、とくに “内側にある本質を見る” ことを重視します。

羅怙羅尊者像は、その思想をとても分かりやすく形にした、象徴的な仏像です。


誰がつくったの?|中国から招かれた仏師・范道生(はんどうせい)

この像を制作したのは、明清時代の仏師・范道生(はんどうせい)

  • 時代:江戸時代前期(1664年)
  • 来日目的:萬福寺の仏像制作のため
  • 日本滞在:約1年
  • 制作した仏像:約27体とも言われる

范道生の作品は、当時の日本仏像とは異なる迫力とリアリティがあり、萬福寺の仏像群は日本美術史の中でも特に重要とされています。

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技法と素材|中国伝統の「乾漆(かんしつ)造」

范道生は、**乾漆造(かんしつぞう)**という中国伝統の技法を用いて制作しました。

▷ 乾漆造とは?

  • 木芯となる骨組みに布を貼り、
  • その上から漆を何度も塗り重ねる
    という、手間と技術が必要な方法。

日本では平安時代以降ほとんど使われなくなりましたが、范道生によって再び息を吹き返した技法でもあります。

羅怙羅(らごら)とは?|釈迦の実子であり、修行者の一人

羅怙羅は、
お釈迦さまが王子だった時代に生まれた実の子ども です。

名前には「妨げ」「束縛」という意味がありますが、それは父の出家時に生まれたため。

しかし実際は、父を慕い、幼い頃から修行に励んだとされ、
十八羅漢の一人として尊敬される人物 となりました。

像に感じられる「けなげさ」「心の奥にある想い」は、この背景を知ることでより深まります。


十八羅漢像とは|悟りを開いた聖者たちの姿

萬福寺の大雄宝殿(だいおうほうでん)には、18体の羅漢像がずらりと並んでいます。

  • 体つきは力強く
  • 表情も個性的
  • 明清時代の中国仏教美術の様式を忠実に再現

日本の仏像ではなかなか見られない雰囲気で、異国情緒に満ちた空間が広がります。

羅怙羅尊者像は、その中でも特に表現がユニークで人気が高い1体です。

鑑賞ポイント(初心者向け)

① 胸の中の「小さな釈迦」

心の中の仏性を表す、禅宗ならではの象徴表現。

② 顔の表情や水晶の瞳

生きているような目の輝きに注目です。

③ 彩色の美しさ

金泥や文様の細かさは、近くで見るほど圧巻。

④ 他の羅漢像との違い

萬福寺の十八羅漢は全体的に個性的。“並び”で見るとより深く味わえます。



まとめ|背景を知ると、もっと心に響く仏像

京都国立博物館の特別展でも、羅怙羅尊者像はフォトスポットとして人気でした。
胸を開いて内なる仏を示すという表現は衝撃的ですが、
「自分の中にこそ仏がいる」
という禅の教えを、とてもわかりやすく伝えてくれます。

釈迦の実子であり、名前に「妨げ」の意味を持ちながらも、父のあとを追って修行の道を選んだ羅怙羅の人生を思うと、そんな彼が「自分の胸の中に仏がいる」と示す姿は、禅の本質を表しつつも、深い信心とけなげさが伝わってくるようです。

このような背景を知ると、羅怙羅尊者の思い、そしてこの像が持つ “静かな強さ” をより深く感じられます。

羅怙羅尊者像は、奈良・宇治の萬福寺に安置されております🙏✨ぜひ現地で見ていただきたいです。


※本記事内の写真はすべて筆者が撮影したものです

萬福寺の基本情報

  • 寺名:黄檗山 萬福寺(おうばくざん まんぷくじ)
  • 住所:〒611-0011 京都府宇治市五ヶ庄三番割34
  • 公式HP:https://www.obakusan.or.jp/
  • 拝観情報:羅怙羅尊者像は「大雄宝殿」に安置されています。

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