三十三間堂の「迦楼羅王(かるらおう)像」は、鳥の顔と人の体を持つ“半鳥半人”の守護神で、二十八部衆の中でも特に強い存在感を放つ仏像です。
横笛を手にした独特の姿は日本でも珍しく、鎌倉時代の高度な彫刻技術がそのまま残る国宝。
本記事では、迦楼羅王像の特徴・意味・歴史・見どころを初心者にも分かりやすく解説します。
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迦楼羅王像とは?|三十三間堂を代表する“鳥の顔の守護神”
千手観音を守る「二十八部衆」の中で、ひときわ異彩を放つのが 迦楼羅王像(かるらおうぞう) です。
鳥の頭と人の体、背中に翼を持ち、横笛を吹くという唯一無二の姿は、三十三間堂の仏像群の中でも強い印象を残します。
■ 基本データ
- 像高:約163.9cm
- 制作時代:鎌倉時代
- 構造:寄木造・彩色
- 姿:鳥の顔+人の体+翼。横笛を吹く姿勢
- 場所:三十三間堂・千手観音像の前(二十八部衆の一尊)
中でも迦楼羅王像は、羽の造形・衣のしわ・表情のリアルさが特に優れ、国宝に指定されています。
迦楼羅の起源|インド神話の神鳥ガルダから生まれた守護神
迦楼羅(カルラ)のルーツは、インド神話に登場する神鳥 ガルダ(Garuda)。
ガルダは口から火炎を吐き、毒蛇を食べ尽くす最強の霊鳥として知られています。
この神話が仏教に取り入れられ、
- 悪を焼きつくす
- 病を除く
- 災厄を祓う
- 延命の力を持つ
といった「護法善神(仏法を守る神)」へと姿を変えました。
なぜ迦楼羅は二十八部衆に入っているの?
二十八部衆は、千手観音の守護神のグループです。
ガルダが“神の乗り物”として崇拝されていた歴史から、仏教でもその強大な力が認められ、護法神として採用されました。
そのため、迦楼羅王は 千手観音を守り、悪を払い、衆生を守る存在 として三十三間堂に祀られています。
なぜ横笛を持っているの?
迦楼羅王像が横笛を吹く姿は、日本独自の表現と考えられています。
諸説ありますが、主には以下の理由です:
- 音楽は悪を祓う力を持つ とされていた
- 警笛としての意味(邪気に対する警告の音)
- 鎌倉時代の美術的アレンジとして「音楽神的イメージ」が加わった
実際の像は、笛を吹く“直前”の瞬間を切り取ったようなポーズで、ピンと張りつめた神聖な雰囲気をまとっています。
火炎・龍との関係|迦楼羅の神話的背景
- ガルダ(迦楼羅)は火を吐き、毒蛇を食べる霊鳥
- 毒蛇=煩悩・悪の象徴
- 火で煩悩を焼き尽くす=救済の力
不動明王の背後に見られる「迦楼羅焔(かるらえん)」も、この火炎の象徴です。
迦楼羅は『金光明最勝王経』などの経典にも登場し、
- 降魔
- 病除け
- 延命
- 雨乞い・止雨
などのご利益を持つと記されています。
歴史背景|三十三間堂と鎌倉時代の再建
三十三間堂は1164年に後白河上皇の願いで創建されましたが、1249年に火災で多くの仏像が焼失。
現在の伽藍や仏像群は、1266年に後嵯峨上皇が再建したものです。
迦楼羅王像もこの鎌倉期に作られ、力強い造形とリアルな表現が特徴です。
見どころ|迦楼羅王像の鑑賞ポイント
初心者でも分かりやすい“注目すべきポイント”はこちら:
① 鳥の顔と人間の体の絶妙なバランス
鼻筋や嘴の形、目つきの鋭さが特に美しい。
② 翼の立体的な造形
羽の一本一本が丁寧に彫られ、今にも動き出しそう。
③ 横笛を吹く神秘的なポーズ
“音楽で悪を祓う”という思想が感じられる。
④ 鎌倉彫刻の写実力
衣の彫り、体のひねりなど、技術の高さが際立つ。

まとめ|芸術と信仰が融合した唯一無二の守護神
三十三間堂の迦楼羅王像は、
- インド神話のガルダを起源に持ち
- 煩悩を焼き尽くす霊鳥として信仰され
- 日本独自の造形(横笛を吹く姿)で表現された
非常に珍しい守護神の仏像です。
鳥の顔に人の体、翼を広げた姿は、まさに「異形の神聖」。
見るほどに惹き込まれ、ただ“かっこいい”と感じる人も多いでしょう。
迦楼羅は、日本の「烏天狗(からすてんぐ)」の起源とも言われています。
鳥の顔に人間の体、翼を持ち、横笛を吹きながらリズムをとって少し浮かせた足、まさに異形の中の神聖さを表している、三十三間の迦楼羅王像。
異彩を放った存在感に魅入ってしまいました。シンプルにかっこいいです😊
三十三間堂を訪れた際にはぜひ注目してほしい国宝の一尊です。
実際に会いに行くには?|三十三間堂へのアクセス
横笛を手にした半鳥半人の守護神・迦楼羅王像に会いたくなった方も多いのではないでしょうか。
この仏像は、京都・東山区にある 三十三間堂(正式名称:蓮華王院本堂)の本堂 に安置されています。堂内には千体千手観音像や二十八部衆像がずらりと並び、圧巻の空間が広がっています。
その中でも、異彩を放つのが迦楼羅王像。横笛を持つ独特の姿は、静けさの中にどこか神秘的な力を感じさせてくれます。

京都・三十三間堂(蓮華王院)|拝観情報
- 住所:京都府京都市東山区三十三間堂廻町657
- 拝観時間:4月1日~11月15日:8:30~17:00
/11月16日~3月31日:9:00~16:00 - 公式サイト:https://www.sanjusangendo.jp/
※最新情報は公式HPでご確認ください
アクセス方法
- JR「京都駅」から市バス100・206系統で約10分、「博物館三十三間堂前」下車すぐ
- 京阪電車「七条駅」から徒歩約7分

公共交通機関でのアクセスも良く、京都観光の途中に立ち寄ることもできます。
詳細なアクセス方法は、以下の記事で詳しくまとめています👇
▶︎京都|三十三間堂【アクセス完全ガイド】京都駅から徒歩・バスで迷わず行く方法
紅葉のシーズンは、三十三間堂の庭園も綺麗です🍁

京都の旅で心に残る仏像との出会いを
京都は、四季折々に表情を変える街並みと、歴史ある寺院や仏像が息づく場所です。春の桜、夏の青もみじ、秋の彩り、冬の静けさ──どの季節にも、それぞれの魅力があります。寺社を訪れるたびに、時の流れとともに変わる景色と、変わらない祈りの姿に心が整うことでしょう。
普段は非公開の仏像や特別拝観の機会も多く、歴史や信仰に触れながら深く心に残る時間を過ごせます。訪れる際は、拝観料や公開期間を事前に確認し、公共交通機関を利用することでスムーズにアクセスできます。人が少ない時間帯を選べば、より静かに仏像と向き合うことができるでしょう。
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迦楼羅像の紹介|奈良編
迦楼羅王は日本各地の名刹で祀られており、時代や様式ごとに異なる表情を見せてくれます。以下の寺院では、実際に迦楼羅像を拝観することができます。
奈良県・興福寺(国宝館)
奈良時代に作られた非常に貴重な国宝の迦楼羅王像(像高149cm)が収蔵されています。脱活乾漆造という古代の技法で作られ、彩色も一部残る非常に古い仏像で、国宝館にて、阿修羅像と並んで常時公開されています。写実性というよりも神秘性と荘厳さを感じさせる造形です。
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