奈良・安倍文殊院に祀られる、木造・極彩色の騎獅文殊菩薩像(きしもんじゅぼさつぞう)──高さ約7メートル、日本最大級の木彫仏として知られるこの像は、鎌倉時代の名仏師・快慶(けいかい)による傑作です。
獅子の背に結跏趺坐(けっかふざ)し、降魔の利剣(ごうまのりけん)と蓮華を手にした姿は、迷いや無明を断ち、泥の中から清らかに咲く慈悲と智慧を同時に象徴します。
この記事では、この名仏師・快慶による傑作と言われる騎獅文殊菩薩像の魅力を、造形・表情・鑑賞ポイントを中心に、やさしい言葉で丁寧にご紹介します。
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学問の寺・安倍文殊院に祀られる「智恵の文殊」

奈良県桜井市にある安倍文殊院(あべもんじゅいん)は、「三人寄れば文殊の知恵」で知られる文殊菩薩を本尊とする古刹です。学問成就や受験合格の祈願寺として名高いこの寺院の中心には、国宝「騎獅文殊菩薩像(きしもんじゅぼさつぞう)」が静かに祀られています。
鎌倉時代の名仏師・快慶(かいけい)が建仁3年(1203)から承久2年(1220)にかけて造立したこの像は、木造極彩色の騎獅像として日本最大級、高さ約7メートルに及びます。文殊菩薩は右手に「降魔の利剣(ごうまのりけん)」、左手に「蓮華(れんげ)」を持ち、獅子の背に結跏趺坐(けっかふざ)するお姿。静けさの中に、智恵と慈悲の光が宿ります。
智恵と慈悲を象徴する姿|降魔の利剣と蓮華の意味

文殊菩薩の右手の剣は、迷いや無明を断ち切る「降魔の利剣(ごうまのりけん)」。左手の蓮華は、泥の中から清らかに咲く「慈悲の象徴」。剣と蓮を同時に携えるその姿には、知と慈しみがひとつに融け合う、深い調和の世界が表されています。
安倍文殊院では古来より「知恵の文殊さま」として信仰され、受験や学問だけでなく、人生の岐路に立つ人々が心を整える場としても親しまれています。祈りを捧げるたびに、静かに導かれていくような感覚に包まれます。
快慶作・鎌倉彫刻の美|写実と荘厳の融合
- 国宝
- 鎌倉時代
- 快慶作
- 壮麗で動的
- 文殊像約7m (日本最大級の騎獅文殊菩薩像)
- 文殊+四侍者の5体群像
- 説法の旅、渡海の動的シーン
- 力強い説法の姿勢、劇的演出
作者の快慶は、運慶と並び称される鎌倉時代の巨匠です。彼の仏像には、写実的な造形の中に清らかな精神性が息づいています。文殊菩薩の衣の流れは風を感じさせ、獅子の筋肉には生命の鼓動があり、玉眼のまなざしは今にも語りかけてくるようです。
彩色は時を経てやや褪せていますが、その痕跡の中にこそ祈りの時間が宿っています。衣文や髪型には宋風の要素も見られ、国際的な美意識をも取り入れた快慶の芸術観を感じさせます。
五尊の調和|文殊菩薩を囲む脇侍たち「渡海文殊群像」

この騎獅文殊菩薩像は、四体の脇侍を従える「渡海文殊群像(とかいもんじゅぐんぞう)」として安置されています。
- 優填王(うでんおう)像…獅子の手綱を引く王。理性と統率の象徴。
- 善財童子(ぜんざいどうじ)像…文殊を先導する童子。求道と純粋な信仰の象徴。
- 維摩居士(ゆいまこじ/最勝老人)像…在家の賢者。智慧の完成を示す。
- 須菩提(すぼだい/仏陀波利三蔵)像…悟りを得た長老。真理を伝える存在。
五尊がともに歩む姿は、文殊菩薩が人々を救うために説法の旅に出る情景を表しています。それぞれの像に託された徳目がひとつの調べとなり、堂内に静かな祈りの響きを生んでいます。
西大寺の文殊菩薩像との比較
奈良・西大寺にも快慶の弟子による「騎獅文殊菩薩像」が伝わります。西大寺像が内に秘めた静謐な美を見せるのに対し、安倍文殊院像はより壮麗で、説法の力強さが前面に感じられます。両者を見比べると、快慶一門が追い求めた“智慧のかたち”がそれぞれの仏像に結実していることが分かります。
▶︎安倍文殊院と西大寺|2つの文殊菩薩の違いや魅力を比較した記事はこちら
念願の文殊菩薩騎獅像との対面
2025年10月、念願の文殊菩薩騎獅像にお会いしました。耐震工事中のため透明なシート越しではありましたが、その気品と迫力は一瞬で心を奪いました。獅子の上に坐す文殊菩薩の柔らかな微笑み、その奥にある厳かな慈悲に、ただ静かに見入るばかりでした。
長い年月を超えて、祈りがこの場所に息づいている——。そう感じた瞬間でした。仏師・快慶という一人の人間が彫り上げた“光のかたち”が、今も訪れる人の心を照らし続けています。

安倍文殊院|アクセス・拝観情報

- 所在地:奈良県桜井市阿部645
- アクセス:JR・近鉄「桜井駅」から徒歩約20分/奈良交通バス「安倍文殊院前」下車すぐ
- 拝観時間:9:00〜17:00
- 拝観料:大人700円(本堂+記念品付き)/大人1200円(本堂+金閣浮御堂共通券+記念品付き)
- 最新情報は公式サイトをご確認ください
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まとめ|智恵と祈りが宿る、快慶の名作に出会う

快慶が彫り上げた騎獅文殊菩薩像は、智恵と慈悲を具現化した存在。穏やかな微笑みの前で静かに手を合わせると、知識では届かない“心の智恵”が内から芽生えるようです。 光と静けさに包まれたこの場所で、あなたも文殊菩薩のまなざしに心を預けてみてください。きっと、優しい答えが見つかるはずです。
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🇺🇸 English Summary(英語要約)
The “Mounted Monju Bosatsu” at Abe Monjuin Temple in Nara is Japan’s largest wooden Monju statue, crafted by the master sculptor Kaikei in the early 13th century. Riding on a lion and holding a sword and lotus, this vibrant work embodies wisdom and compassion. Surrounded by four attendants, the group known as the “Five Monju Figures” depicts a divine journey to guide beings toward enlightenment.

