清水寺のご本尊は、
十一面千手観音菩薩立像
(じゅういちめん せんじゅかんのん ぼさつ りゅうぞう)です。
この観音さまは、
33年に一度だけ御開帳される秘仏として知られていますが、
普段の参拝では、同じ姿を写した
「御前立像(おまえだち ぞう)」を拝観することができます。
頭上に高く掲げた二本の手が
特徴的な「清水型千手観音」は、
全国でも清水寺ならではの特別な姿。
十一の表情と千の手に込められた意味を知ることで、
ただ“見る”だけではない、
心が静かに整う観音さまとの出会いが生まれます。
この記事では、
✔ 清水型千手観音の特徴
✔ 秘仏と御前立像の違い
✔ 初心者でも分かる見どころ
を、やさしい言葉で解説していきます。
清水寺の本尊・十一面千手観音菩薩とは
― 秘仏として守られてきた「清水型」観音の魅力 ―
京都・東山に建つ清水寺。
その本堂の内々陣、
厨子の中に静かに安置されているのが、
十一面千手観音菩薩立像です。
この観音さまは清水寺の本尊であり、
33年に一度しか姿を現さない秘仏
として知られています。
通常の参拝では
直接お会いすることはできませんが、
同じ姿を写した御前立像が
常時安置されており、
今も多くの人の祈りを受け止めています。
基本情報
- 名称:十一面千手観音菩薩立像(秘仏)
- 所在:清水寺 本堂 内々陣(厨子内)
- 時代:鎌倉時代中期
- 作者:不明
- 像高:約173cm(本尊)
- 光背から台座までの総高は約260cm
- 材質・技法:檜材寄木造、漆や彩色を施さない素地仕上げが特徴
- 御開帳:33年に一度(次回は2055年頃と推定)

清水寺ならではの姿「清水型千手観音」
清水寺の十一面千手観音が
特別視される理由のひとつが、
「清水型」と呼ばれる独特の姿です。
一般的な千手観音は、
左右に整然と手を広げていますが、
清水寺の観音さまは――
- 脇手の最上部の左右二臂(2本の手)を長く伸ばし
- 頭上高く掲げ
- その先で合掌して小さな釈迦如来の化仏を捧げ持つ
- 独特なお姿
という、
他にほとんど例のない姿をしています。
この高く掲げられた二臂(2本の手)は、
「どこにいる人も、必ず見捨てない」
という、観音の強い慈悲を象徴しているといわれます。
十一面が表す、観音の多様なまなざし
頭部には十一の顔が刻まれています。
- 正面三面:やさしく衆生を見守る「慈悲の顔」
- 左三面:誤りを戒める「怒りの顔」
- 右三面:進む力を与える「励ましの顔」
- 後面:すべてを包み込む「大笑面」
- 頂上:悟りの象徴「仏面」
どの方向から見ても、
「今のあなたに必要な表情」で見つめてくれる――
それが十一面観音の最大の魅力です。
千の手と千の眼に込められた意味
千手観音の「千」は、実際の数ではなく
“無限”を表します。
清水寺の観音さまは42本の腕を持ち、
その一本一本に
衆生を救う力が宿ると考えられています。
- 苦しむ人を見逃さない「千の眼」
- 手を差し伸べる「千の手」
この思想が、清水寺が古くから
病気平癒・安産・所願成就の観音として
信仰されてきた理由です。
材質と技法が生む、やさしい存在感
本尊は檜材の寄木造。
彩色を施さず、
木の質感を生かした素地仕上げです。
- やわらかな肉付き
- 穏やかな表情
- 水晶をはめ込んだ白毫(眉間)
派手さはありませんが、
近づくほどに静かな品格が伝わってくるとのこと。

作者は不明、それでも伝わる「慶派の気配」
清水寺の十一面千手観音の作者は、
史料上は不明です。
ただし、造形や技法からは
鎌倉時代・慶派系工房の関与が推定されています。
運慶・快慶といった名匠の名は断定できませんが、
「人の心に寄り添う造形」という慶派の精神は、
確かにこの観音さまにも息づいています。
なぜ秘仏なのか ― 観音の力を守るため
この観音さまが秘仏とされてきた理由には、
いくつかの意味があります。
- 霊験の強さを保つため
- 長い年月、像を守るため
- 信仰の特別性を高めるため
33年に一度だけ姿を現すという周期は、
「会えること」そのものを尊い体験にしています。
御前立像という、今も寄り添う存在
本尊の代わりに、
御前立像が本堂で常時拝観できます。
姿は本尊と同じ「清水型」。
秘仏に会えない日でも、
観音の慈悲は決して遠くありません。
清水寺は舞台だけでなく、
本堂に安置されている
十一面千手観音菩薩像に
手を合わせるための場所でもあります。
清水寺は観光客が多い印象がありますが、
京都駅からのルートを事前に知っていれば、
落ち着いて本堂まで向かうことができます。
心が整う鑑賞ポイント|清水寺の十一面千手観音
清水寺の十一面千手観音は、
「圧倒する仏」ではなく、
静かに受け止めてくれる仏だと感じました。
- 観光客で賑わう境内
- その奥で、ひっそりと祈りを受け続ける観音
その対比が、心を不思議と落ち着かせてくれます。
心が整うポイント
- 早朝の参拝は比較的静か。
- 御前立像の前で、少し距離を取って全身を眺める。
- 頭上に掲げられた二臂(2本の手)に注目すると
「清水型」の意味が自然と伝わります。
実際に御前立像にお会いして感じたこと
薄暗い堂内の奥。
大勢の観光客の声が行き交う中でも、
十一面千手観音さまの前では、
自然と周りの音が気にならなくなりました。
三つの顔、八本の腕――
その複雑な姿なのに、
なぜか怖さはなく、ただ神々しい。
この観音さまの
“必ず救う”という揺るぎない姿勢に、
強く心を惹かれました。
また会いに来たい。
そう思わせてくれる一尊です。

御前立像|通常拝観について
なお、清水寺の本尊・十一面千手観音菩薩立像は
秘仏のため、通常は公開されていません。
通常拝観できるのは、
本尊と同じ姿で造られた「御前立像」で、
本堂内で日常的にお参りすることができます。
清水型千手観音の特徴は、
この御前立像でもしっかりと感じることができます。
▶︎ 【清水寺】特別拝観|十一面千手観音と内々陣の仏像を巡る
そして仏像の中でも、今なお多くの人の心を惹きつける存在が
奈良・興福寺の阿修羅(あしゅら)像です。
▶ 阿修羅像の表情・造形・魅力を初心者にもわかりやすく解説した記事はこちら
京都・清水寺|拝観情報
清水寺 基本情報
寺院名:音羽山 清水寺(きよみずでら)
所在地:京都府京都市東山区清水1丁目294
本尊:十一面千手観音菩薩立像(秘仏)
通常拝観:御前立像(同型)
拝観時間
- 6:00〜18:00(季節により変動あり)
- 夜間特別拝観期間あり(春・夏・秋)
✔︎ 本尊秘仏は33年に一度の御開帳
✔︎ 御前立像は通常拝観可能

