東寺の隠れ名所『観智院』|五大虚空蔵菩薩像の魅力と拝観ガイド

寺院ガイド(所蔵寺院)

「東寺」拝観とあわせて訪れたい隠れスポット『観智院』

京都・東寺とうじといえば国宝「金堂こんどう」や「五重塔ごじゅうのとう」が有名ですが、その境内の北側にひっそりと佇む塔頭寺院たっちゅうじいん観智院かんちいんです。
ここでは、あまり知られていない重要文化財の仏像群五大虚空蔵菩薩像ごだいこくうぞうぼさつぞうに出会うことができます。

参拝客も少なく、畳に座ってゆっくりと「五大虚空蔵菩薩像」を拝観できる特別な場所です。

東寺を訪れるならぜひ立ち寄りたい隠れた名所です。


観智院かんちいん」とは…東寺の勧学院かんがくいん(学問所)として、鎌倉時代の1359年(延文4年)頃に創建された真言宗東寺の塔頭寺院です。


観智院の五大虚空蔵菩薩像|由来・特徴・歴史

観智院本堂の本尊である 五大虚空蔵こくうぞう菩薩像 は、唐時代(9世紀)に真言宗の開祖・空海くうかいの弟子、恵運えうんによって中国から請来されたと伝わる非常に貴重な木造仏像群です。

  • 五尊それぞれが異なる動物に乗る:獅子しし・象・馬・孔雀くじゃく迦楼羅かるら(ガルーダ)
  • 象徴する尊名:
     金剛虚空蔵こんごうこくうぞう(獅子)/宝光虚空蔵ほうこうこくうぞう(象)/法界虚空蔵ほうかいこくうぞう(馬)/蓮華虚空蔵れんげこくうぞう(孔雀)/業用虚空蔵ごうようこくうぞう(迦楼羅)
  • 五智如来(大日如来以下の五仏)の教えを象徴し、密教における「五大虚空蔵菩薩」として、無限の知恵・慈悲・そして様々な功徳(息災・増益・厄除けなど)を顕現しています。
  • 本尊として安置されている五体は、密教曼荼羅に登場する五大仏の姿を表現しています。
  • いずれも蓮の花弁の形をした蓮台に結跏趺坐し、現存する多くの部分は後世に補修されているものの、全体の造形は唐時代の特徴を色濃く残しています。
  • 異国的な美術性や密教ならではの荘厳な世界観─すべての存在を包み込む虚空蔵菩薩の智慧─を視覚的に表しています。
  • 像高:約70〜75cm、木造一木造りによる古色を帯びた伝統的な風貌。
  • 外来の影響が強く、面長な顔立ちや衣装、動物台座は大変ユニークで、日本仏像界でも非常に異国的な美しさとされています。
  • 元は山科・安祥寺の本尊であり、観智院建立時に移されたとされています。

その異国的な美しさは日本仏像の中でも特に独自性が強く、日本に現存する唐時代仏像の代表作 として重要文化財に指定されています。


金剛虚空蔵こんごうこくうぞう(獅子)

「金剛」は堅固で強いことを意味し、金剛虚空蔵菩薩は力強く智慧を授ける菩薩として信仰されています。

宝光虚空蔵ほうこうこくうぞう(象)

南方を守り、象に乗る青色の仏様です。願いを叶え満足を与える慈悲の菩薩とされています。

法界虚空蔵ほうかいこくうぞう(馬)

五大虚空蔵菩薩の中央に位置し、白色で表されます。迷いを解き払う力を持ち、大日如来の化身ともされる菩薩です。

蓮華虚空蔵れんげこくうぞう(孔雀)

西方を守り、赤色をしています。蓮華(ハス)を手に持ち、阿弥陀如来の化身とされる菩薩です。

業用虚空蔵ごうようこくうぞう(迦楼羅)

北方を守り、黒紫色をしています。穢れを離れて清浄な仏様とされ、知恵や記憶力の向上にご利益があるとされています。


五大虚空蔵菩薩像が乗る聖獣とその意味

五体の虚空蔵こくうぞう菩薩は、それぞれの徳を象徴する聖獣せいじゅうに乗っています。

  • 獅子(ライオン):金剛虚空蔵:力強さや勇気、威厳の象徴です。百獣の王として恐れずに真理を説く力、教えの強さを表します。
  • 象:宝光虚空蔵:悟りの実践、障害を乗り越える力、また純白の象は清浄さの象徴とされます。普賢菩薩などが乗る白い象は、智慧の実践や純粋さ、障害を取り除く安定した力を意味します。
  • 馬:法界虚空蔵:王や貴族の乗り物として、迅速さや自由、荘厳さ、社会的地位を象徴します。
  • 孔雀:蓮華虚空蔵:毒蛇を食べるという神話から、毒(煩悩や災厄)からの守護・浄化の力を意味します。
  • 迦楼羅(ガルーダ):業用虚空蔵:インド神話の鳥の王で、決して落ちず悪を退ける存在。「勝利」「最強の守護」を意味し、仏を守護する力の象徴とされています。

これらの動物たちは、それぞれが菩薩や如来が持つ徳や働きを視覚的に表現し、信者の信仰心や安心感をより強める役割を果たしています。


五大虚空蔵菩薩像の安置方法と曼荼羅(まんだら)的配置

観智院の五大虚空蔵菩薩像は、本堂に安置されており、それぞれ蓮の花弁で象った蓮台に結跏趺坐けっかふざしています。五尊の菩薩像は、獅子、象、馬、孔雀、迦楼羅(ガルーダ)というそれぞれ異なる聖獣に乗った姿で配置されています。

全体としては昔は中尊を中心にして五体が東西南北に配され、立体曼荼羅のような形で荘厳に祀られていたのですが、現在は横一列に並べて安置されています。

つまり、五大虚空蔵菩薩像は

  • 蓮台に坐し
  • それぞれが聖獣に乗る形で表現され
  • かつては立体曼荼羅的に中尊中心に五方位に配置されたが
  • 現在は横一列で安置

というのが主な安置の特徴です。


静かで穏やかな空間で拝観すると、菩薩の慈悲と守護に包まれるような感覚を覚えます。

観智院の見どころ|五大虚空蔵菩薩像以外の仏像

愛染明王(あいぜんみょうおう )像

江戸時代のもので、赤い顔と六本の腕を持つ憤怒ふんぬの仏です。愛欲を悟りに浄化するとされ、信者からは良縁や家内安全の願いを込めて祈られています。


また、客殿は京都市で最古の茶室付き書院とされ、国宝に指定されています。

さらに見逃せないのが、内部は撮影禁止ですが、宮本武蔵が描いた襖絵「鷹の図」や「竹林の図」も間近から見ることができます。剣豪の意外な一面に触れられるスポットとしても人気です。


観智院の歴史と特徴|東寺の塔頭寺院としての役割

観智院は、鎌倉時代に学問寺として建立されました。東寺の学僧たちが修行や勉学を行った場であり、仏教教育の拠点でもありました。
そのため、五大虚空蔵菩薩像は「学問成就」を願う信仰とも深い関わりを持っています。

観智院を訪れて感じた魅力と体験談

筆者は「動物に乗る菩薩」に特に惹かれ、つい時間を忘れて拝観してしまいました。

また、宮本武蔵の襖絵ふすまえを目にした時、約30年前に見た人が「絵が薄くなっている」と話しており、文化財は永遠ではなく「今見られることが貴重」だと実感しました。

庭園に面した縁側で休むと、枯山水の景色や近くの学校から聞こえる学生の声に癒され、茶室では秋には紅葉と「ししおどし」の音が日本の風情を感じさせてくれます。

人混みが苦手な方でも、ここでは夕焼けと庭園を眺めながら静かに心を落ち着けることができます。


襖絵とは…和室のふすまに描かれた絵のことで、伝統的な日本建築の装飾として重用されています。襖に描かれる絵画は芸術作品としての価値も高く、京都の寺院などで国宝に指定されているものもあります。


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観智院の拝観方法と注意点

  • 拝観時間:9:00〜16:30(受付終了)※変動あり
  • 普段は非公開だが、特別公開や東寺拝観券に含まれる場合あり
  • 拝観料:靴を脱いで入堂、順路に従って拝観
  • 体験:写経や塗香体験ができる場合あり(要確認)
  • 特徴:十三参りの参拝地としても有名

観智院の五大虚空蔵菩薩像の拝観は、東寺の歴史や仏教美術を学びつつ、静かな雰囲気の中で五尊の荘厳な姿と密教の教えに触れられる貴重な機会となります。

観智院へのアクセス|京都駅からの行き方

  • 徒歩:京都駅八条口から約15分
  • 市バス:「東寺東門前」下車、徒歩すぐ
  • 近鉄電車:「東寺駅」から徒歩約10分

東寺境内北側に位置し、拝観は単独でも可能ですが、東寺拝観とあわせて訪れるのがおすすめです。


まとめ

観智院は、東寺境内にありながら観光客にはあまり知られていない静かなスポットです。
重要文化財「五大虚空蔵菩薩像」や国宝客殿、宮本武蔵の襖絵など、見どころが凝縮されています。

京都・東寺を訪れる際は、ぜひ足を延ばして、五大虚空蔵菩薩像の前でゆったりと心を落ち着けてみてください。

筆者は、東寺参拝後の夕方に訪れるのが好きです😊

おわりに|仏像を通して心にふれる時間を

仏像の世界は、本当に、奥深くて、美しくて、人の心に静かに響くものだと思います。

そこには、言葉にしきれない感動や、目の前の仏像から伝わってくる優しさ、強さ、そして静けさがあります。

それを理解できる人は少ないかもしれないけれど、私が発信し続けることで、「なんかいいかも」って思ってくれる人が、きっと少しずつ増えていくーーー

仏像の魅力を、もっともっと、世の中に伝えていけますように🙏✨

そんな思いを込めて、このブログを書いています😊

🇺🇸 English summary(英語要約)

To-ji Temple’s Hidden Gem: The Five Great Kokuzo Bosatsu at Kanchiin

Kanchiin, a sub-temple of Kyoto’s famous To-ji Temple, houses one of the most fascinating Buddhist art treasures in Japan: the Five Great Kokuzo Bosatsu statues. These wooden figures, designated as Important Cultural Properties, are unique for their Tang Dynasty influence and dynamic poses. Each Bosatsu is depicted seated on a different symbolic animal — lion, elephant, horse, peacock, and Garuda — representing wisdom, compassion, and cosmic power.

Unlike To-ji’s main hall, Kanchiin offers a quiet, intimate atmosphere, making it an ideal spot for travelers seeking a deeper connection with Buddhist culture away from the crowds. Visitors can admire the statues up close while also enjoying the temple’s serene garden.

The article also provides practical information such as opening hours, ticket prices, and access details, making it easy for first-time visitors and solo travelers to plan their visit with confidence.


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