📍奈良 円成寺 |国宝「大日如来坐像」
円成寺の「大日如来坐像」は、奈良市の円成寺に安置されている国宝であり、鎌倉時代の天才仏師・運慶が20代で制作したとされる記念碑的な仏像です。

※こちらの仏像画像は、円成寺「大日如来坐像」の雰囲気をお伝えするためにAIで作成したイメージです。実際の仏像とは一部異なる点もありますが、仏師・運慶の世界観を感じていただけたら嬉しいです。
主要な特徴・概要
- 制作年代:平安時代末期(12世紀後半)、運慶の最初期の作とされる。
- 作者:運慶(制作時は20歳代後半と推定)。
- 像高:98.8cm。
- 材質・技法:檜材の寄木造り、玉眼(目に水晶を用いる技法)の嵌入、漆箔仕上げ。
- 安置場所:かつて多宝塔の本尊、現在は相應殿(そうおうでん)に安置。
造形・意義
- 姿勢:智拳印(ちけんいん)を結び、やや肘を張るような独特の構え。正面は左右対称で緊張感があり、横から見ると有機的な美しさが感じられる。智拳印という印を結ぶ手の位置は、他の仏像に比べ高いところにある。これは、胸との間の空間を複雑にすることで立体感を増すための工夫だそう。
- 智拳印:大日如来特有の印を結び、静謐ながらも内に力を秘めた姿が表現されています。また、その指先は、まるで血が通っているように生き生きとしている。
- 様式的特徴:それまでの「定朝様」の仏像に比べ、上体を約4度後傾させるなど、自然な動きと緊張感を両立。運慶が父・康慶の図面をもとに新たな造形を追求した結果とされる。
- ふっくらとした足の裏:仏像の足裏は平板状の形に指を付けただけというものもあるが、この像では各指の肉感的なふくらみや、親指の付け根のふくらみ、土踏まずや踵に至るまで自然に美しく表現されている。非常に繊細でふくよかで写実性に富んだ足の裏も見どころである。
- 精緻な表現:玉眼による眼差し、豊かな衣文表現、力強い体躯が特徴。
- 制作期間の長さ:当時、同様の大きさの仏像は約3か月で完成したらしいが、運慶は、この仏像を造るのに11か月を費やしたことが、台座の墨書銘により確認されている。
※上体を約4度後傾させるというのは大変なことだが、この上体を約4度後傾させるという工夫により、新たな造形を作り上げた。これにより、運慶の大日如来は姿勢の制約から解放され、肘と胸を張った、自然で緊張感のある姿を手に入れた。
大日如来の意義
密教における根本仏で、サンスクリット名「ヴァイローチャナ」は「遍(あまね)く光を照らす者」を意味し、如来でありながら宝冠や瓔珞など王者の装飾を身に着けています。
玉眼の特徴と意義
- 玉眼とは:水晶などを使って仏像の目にリアルな輝きを与える技法で、立体感と生命感を強調。
- 日本の仏像彫刻における玉眼の最初期の本格的作例。
- 他の仏像に比べ両目の間隔がやや近いのは運慶の仏像の特徴。
智拳印(ちけんいん)とは
- 主に密教の大日如来(金剛界大日如来)が結ぶ独特の印(ハンドサイン)。
- 結び方:胸の前で左手人差し指を立て、それを右手で包み込むように握る。
- 意味:右手は仏の世界、左手は人間世界を表し、仏と衆生が一体となって煩悩を滅し、仏の智慧を得ることを象徴。
- 特徴:大日如来像の特徴的な印であり、仏像鑑賞の際にはこの手の形で大日如来を見分けることができます。
この印は「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」――すなわち、迷いや苦しみがそのまま悟りにつながるという密教の根本思想を表現しています。
まとめ
運慶の素晴らしさは、足の裏等、細部の何気ない部分までも写実的に美しく表現できていることです。髪の毛のふくらみまで表した丁寧な彫りや、大きな耳の優雅なのびやかさなどにも注目です。
この像の特別な表現はすべて若き運慶の試行錯誤の跡だというのである。
普通の仏像にくらべ鼻根が低く、日本人の顔を写したかのような表現も特徴だという。運慶には、人間と同じ肉体を持っていてこそ祈りの対象たる仏像なのだという意識があったのではないでしょうか。
そんな自らの課題に取り組んだ若き日の運慶に思いを馳せながら、細部まで鑑賞してほしいです。
参拝方法
円成寺の相應殿(そうおうでん)で運慶作「大日如来坐像」(国宝)を間近で拝観可能。
多方向からの鑑賞ができ、造形や細部まで観察できます。多宝塔には模刻像が安置されています。
▼アクセス情報など詳しくは、奈良市観光協会:円成寺案内をご覧ください。
実際に観て感じたこと

奈良国立博物館「超 国宝」展で至近距離から拝観しました。
とにかく美しい。
穏やかでありながら芯の強さを感じさせる面差し。左右対称に整ったお顔立ち、引き締まった体躯、滑らかに流れる衣文線――どこを見ても、一分の隙もない美しさがありました。
それでいて、どこか人間味を帯びたあたたかさも感じさせ、見る人の心を自然と静けさへと導いてくれます。
これまで沢山の仏像を拝観してきましたが、こんなにも美しく、どれだけ観ても不思議と見飽きることはないほど、魅了されました。
20代後半のデビュー作だというのも驚きです。
博物館での展示の場合、照明や展示台の工夫により多方向から細部まで観察できる可能性が高いので、仏像好きの私にとって最高の場所です。
この「大日如来坐像」の美しさが忘れられず、また、若き日の運慶による精緻な造形を間近で鑑賞できる貴重な機会はなかなかないと思い、九州から2度も奈良へ足を運びました笑
それほどまでに魅了された仏像なのです。
次回は、通常安置されている円成寺で拝観したいです。
仏像ファンへ
若き運慶が全身全霊で彫り上げた大日如来坐像
その静けさと力強さ、そして優しさに触れると、仏像の奥深さを改めて感じさせられます。
仏像好きなら、1度は会っておきたい__そんな一尊です。
「仏像が好き」「ひとりでゆっくり心を整えたい」と思う誰かに届きますように🍀
🇺🇸 English Summary(英語要約)
Enjōji Temple’s Dainichi Nyorai Statue: A National Treasure by Master Sculptor Unkei
The seated statue of Dainichi Nyorai (Vairocana) at Enjōji Temple in Nara is one of Japan’s most celebrated Buddhist sculptures. Created in the late 12th century by the legendary sculptor Unkei in his 20s, this masterpiece marks the beginning of a new era in Japanese Buddhist art.
This statue is notable for its:
- Naturalistic beauty and realism, which paved the way for the Kamakura style.
- Use of gyokugan (crystal-inlaid eyes), giving the figure a lifelike, soulful expression.
- Unique Chiken-in mudra, a symbolic hand gesture representing the unity of wisdom and compassion in Esoteric Buddhism.
Originally enshrined in the temple’s pagoda, it is now housed in the Sōōden Hall, where visitors can view it up close from multiple angles. The statue is not only a National Treasure of Japan, but also a deeply moving presence that continues to inspire awe and serenity in all who encounter it.
Whether you are a fan of Japanese culture, Buddhist art, or simply looking for peace of mind, this statue offers a powerful experience of spiritual beauty and craftsmanship.