- はじめに|私の仏像巡りは、東寺の大日如来から始まりました
- 東寺ってどんなお寺?
- 圧巻の「立体曼荼羅」|21体の仏像と密教の宇宙
- 大日如来と空海(弘法大師)|なぜ中心仏として選ばれたのか?
- 大日如来に会う|中心に座(ざ)す仏の存在感
- 東寺の大日如来とは?|造形と信仰の中心
- 造形美の魅力|金剛界の中心にふさわしい威厳
- 密教において大日如来とは?
- 実際に拝観して感じたこと
- 忘れられない特別拝観の記憶|「東寺のすべて」
- ひとり旅でも安心!東寺へのアクセスと拝観情報
- 東寺での過ごし方|拝観のコツと私のお気に入りスポット
- まとめ|「また来たい」と思える仏像との出会い
- おわりに|仏像を通して心にふれる時間を
- 🇺🇸 English Summary(英語要約)
はじめに|私の仏像巡りは、東寺の大日如来から始まりました

はじめて東寺を訪れたとき、私はただ「静かな場所に行きたい」と思っていました。
そのとき出会ったのが、講堂の中央で静かに座す、大日如来さま。
その眼差しと存在感に圧倒され、でもなぜか心がふっと軽くなって――
気づけば、仏像に会いに京都・奈良を中心に公共機関を使ってひとり旅をするようになっていました。
今回は、そんな私にとって特別な御仏像・大日如来を中心に、東寺の魅力をご紹介します。
東寺ってどんなお寺?
東寺は、平安京の玄関口・羅城門のすぐ近くに位置し、弘法大師・空海が真言密教の根本道場として開いた寺院です。
世界遺産にも登録されており、五重塔や講堂、金堂などが建ち並ぶ広大な境内は、訪れるだけでも心が落ち着きます。
圧巻の「立体曼荼羅」|21体の仏像と密教の宇宙

東寺・講堂内に安置されているのは、21体の仏像で構成された「立体曼荼羅」。
これは密教の宇宙観を立体的に表したもので、中央に大日如来を据え、四方を取り囲むように如来・菩薩・明王・天部が配置されています。
これは、空海(弘法大師)の構想によるもので、仏教の宇宙観をそのまま三次元空間に表現した日本有数の仏像群です。仏像ひとつひとつの表情や姿勢、位置関係に意味が込められており、まさに“仏の世界”がそのまま現れている空間です。
大日如来を中心に曼荼羅世界を直感的に感じることができます。
大日如来と空海(弘法大師)|なぜ中心仏として選ばれたのか?
東寺の大日如来を語るうえで欠かせないのが、真言宗の開祖・弘法大師 空海の存在です。
空海は804年に遣唐使として唐(中国)に渡り、長安の青龍寺で恵果阿闍梨から密教を学びました。そしてわずか2年という短期間でその教えをすべて伝授され、「密教の正統な継承者」として帰国します。
その空海が、密教の教えの本質を日本に伝えるために中心仏として据えたのが――大日如来でした。
大日如来は、密教において「宇宙そのもの」「すべての仏の源」であり、すべての命がそこから生まれ、そこへ還っていくとされる存在です。
空海は「すべての人は仏になれる」という『即身成仏』の教えを説きました。人は修行を通じて、この世にいながら仏の境地に到達できる。そうした密教の思想を象徴する存在が、大日如来なのです。
そして空海は、平安京の玄関口に位置する東寺をその根本道場とし、大日如来を中心に据えた「立体曼荼羅」の世界をつくりあげました。
そこに込められているのは、「仏は遠くにあるものではなく、自分の内にある」という密教のメッセージ。大日如来の前に立つと、まるで自分自身の内面と静かに向き合っているような、そんな気持ちになります。
大日如来に会う|中心に座(ざ)す仏の存在感

立体曼荼羅の中心に鎮座するのが、大日如来。
全ての仏の源とされる存在で、密教において最も大切な仏です。
胸の前で独特な「智拳印」を結び、堂々とした坐像は、静けさと力強さが共存しています。
その前に立った瞬間、言葉にできない安心感が胸に広がり、気づけば深く息をしていました。
写真撮影は禁止なので、その分だけ “今、この瞬間” に集中できます。
東寺の大日如来とは?|造形と信仰の中心
- 仏像名:(重要文化財)大日如来坐像
- 時代:平安時代(9世紀)
- 仏師:康弁など、伝・真言宗の仏師
- 素材:木造漆箔(木彫りに漆で金箔を施す技法)
- 安置場所:講堂中央(立体曼荼羅の中心)
- 現在の像は、文明18年(1486)の土一揆による焼失後、明応6年(1497)に再建されたもの
密教において大日如来は「宇宙の真理そのもの」とされ、すべての如来・菩薩の根源的存在です。
東寺の講堂では、大日如来が堂々と中央に座し、そのまわりを21体の仏像が囲む「立体曼荼羅」が広がっています。
造形美の魅力|金剛界の中心にふさわしい威厳
東寺の大日如来は、他の如来とは異なり、手に印を結んでいます(智拳印)。
これは密教における特別な印相で、左手の人差し指を右手で包むように握る形です。
頭には五智宝冠を頂き、蓮華座に結跏趺坐(座禅の姿)しています。
また、その坐像は堂々とした体躯と、落ち着きのある丸顔。目はやや細めで伏し目がち。
見つめるほどに、内面へと静かに語りかけてくるような存在感があります。
密教において大日如来とは?
宇宙の根本仏、すべての仏の中心・最高存在として位置付けられます
宇宙そのもの・宇宙の真理の象徴
大日如来は森羅万象の根源および宇宙そのものを具現化した存在であり、生命や万物は大日如来から生まれると説かれています 。
森羅万象とは…「宇宙に存在するすべてのものや現象」を意味します。
すべての仏の源泉
釈迦如来や阿弥陀如来を含め、あらゆる仏は大日如来の化身(現れ)とされ、階層的な仏のトップにあたります。
二つの世界「金剛界(こんごうかい)」と「胎蔵界(たいぞうかい)」の中心
大日如来は「智慧」を象徴する金剛界と、「慈悲」を象徴する胎蔵界の2つの側面を持っています。密教曼荼羅の中央にも大日如来が描かれ、両界曼荼羅でその役割が示されます。
※智慧とは…「一切の現象やその背後にある道理を見きわめる心の働き」を意味します。 ※慈悲とは…「いつくしみ」、「悲」は「あわれみ」を意味し、合わせて他の生命に苦を取り除き楽を与える心の働きを示します。
即身成仏の教え
密教では「即身成仏」=生きながら仏となることの理想を説き、大日如来の智慧と慈悲、一体化することが悟りへの道とされます。
密教の本尊・教主
密教経典(金剛頂経・大日経)では大日如来が根本仏であり、真言(マントラ)を用いた儀礼や修行の中心となる存在です。
太陽の象徴
「大日」とは偉大な太陽という意味。昼夜問わず、大日如来の光(智慧と慈悲)は世界を照らすとされます。
* * *
まとめると、密教において大日如来は「宇宙の根源」「万物の生みの親」とされ、全仏・全生命の根本、悟りの到達点かつ修行の目標(即身成仏)として最も重要な役割を果たしています。
実際に拝観して感じたこと
初めて訪れたとき、講堂の扉をくぐると、想像を超えるスケールの仏像たちに圧倒されました。
中でも大日如来は、太陽の優しい光に照らされながら、静かに・力強く鎮座していました。
ただ「大きい」では言い尽くせない、存在の深さ。
密教では “大日如来=宇宙そのもの” と考えます。目の前に立っているのは、ただの仏像ではなく、 “存在の中心” とされる尊い象徴なのです。
その表情に、何かを問われているような気持ちになりました。
周囲の仏像たちが守るように並ぶ中で、大日如来はまさに「中心」であり「源」なのだと実感しました。
忘れられない特別拝観の記憶|「東寺のすべて」

何度も東寺を訪れてきた私ですが、なかでも2023年10月に1ヶ月限定で開催された特別拝観――
**真言宗立教開宗1200年記念「東寺のすべて ~宇宙の真理をここに~」**は、特別に心に残っています。
この企画では、通常は非公開のエリアも拝観でき、東寺にまつわる歴史・信仰・美術の全体像に深く触れることができました。
密教の世界を構成する仏像群が、どのように「宇宙の真理」を表現しているのか、その背景にある空海の思想までをも体感できるような構成で、まさに “東寺のすべて” に触れた時間でした。
静かに仏像と向き合いながら、この空間に込められた祈りや深い知恵を、五感で受け取るような感覚に包まれ、今でも忘れられない拝観体験のひとつです。
ひとり旅でも安心!東寺へのアクセスと拝観情報
東寺は、京都駅から徒歩約15分。
バスなら「東寺東門前」停留所が便利で、降りてすぐに東門が見えてきます。
境内は広く、ベンチや休憩所もあり、女性ひとりでも安心して過ごせます。
- 住所:京都市南区九条町1
- 拝観時間:8:00〜17:00(講堂・金堂・観智院は9:00〜16:30)
- 拝観料:大人800円(特別公開時は別料金)
周辺にはカフェやお土産屋さんもあり、旅の余韻にひたるのにもぴったりです。
東寺での過ごし方|拝観のコツと私のお気に入りスポット

静かに参拝するためのコツ
東寺は観光名所として多くの人が訪れますが、土日祝でも午前中であれば比較的すいていて、静かな雰囲気の中で拝観できます。特に講堂は朝の光が差し込んで、とても神聖な空気が流れています。
講堂内には座って参拝できるスペースがあるのも魅力のひとつ。私はいつも、少し斜め前の位置に座って、大日如来を中心とした立体曼荼羅全体をじっくり眺めるのが好きです。角度を変えると、また違った印象を受けるから不思議です。
また、期間限定で仏像の後ろ側に回って拝観できることもあり、普段は見られない斜め後ろからの眺めも、ぜひ体験してみてください。仏像たちの後ろ姿にも、静かな力強さを感じることができます。
ひと息つける、おすすめの休憩スポット
講堂や金堂周辺は観光客で賑わっていますが、少し奥にある池のまわりにはベンチがあり、意外と人が少なくて穴場です。木々に囲まれた池のそばで、静かに森林浴をしながら過ごせる私のお気に入りの場所。仏像を拝んだあとの余韻に浸るのにぴったりです。
トイレ情報も大事なポイント
参拝前に済ませておきたいトイレ事情も、ひとつの安心材料。受付前にあるトイレはとても清潔で、個室の数も多いので、女性のひとり旅でも安心して利用できます。こうした“見えない快適さ”も、ひとり旅には嬉しいポイントですよね。
まとめ|「また来たい」と思える仏像との出会い
混沌とした世の中でも、自分の内側に静けさを取り戻す――密教仏像は、そんな “心の修行” のヒントを与えてくれる存在かもしれません。
仏像を巡る旅の原点である、東寺の大日如来さま。
何度会っても、その前に立つだけで心が整っていくような気がします。
あの日の出会いがなければ、今の私はきっといなかった――
そう思えるほど、大切な存在です。
あなたにも、きっと「また会いたい」と思える仏像との出会いがありますように。
おわりに|仏像を通して心にふれる時間を
仏像の世界は、本当に、奥深くて、美しくて、人の心に静かに響くものだと思います。
そこには、言葉にしきれない感動や、目の前の仏像から伝わってくる優しさ、強さ、そして静けさがあります。
それを理解できる人は少ないかもしれないけれど、私が発信し続けることで、「なんかいいかも」って思ってくれる人が、きっと少しずつ増えていくーーー
仏像の魅力を、もっともっと、世の中に伝えていけますように🙏✨
そんな思いを込めて、このブログを書いています😊
🇺🇸 English Summary(英語要約)
Toji Temple in Kyoto, a UNESCO World Heritage Site and the headquarters of the Shingon sect of Buddhism, is home to the awe-inspiring Three-Dimensional Mandala (Rittai Mandara). This spatial arrangement of 21 Buddhist statues in the Lecture Hall (Kōdō) is a rare and powerful visualization of the esoteric Buddhist cosmos. At the center sits Dainichi Nyorai (Mahavairocana Buddha), representing the universal truth, surrounded by various Buddhas, Bodhisattvas, Wisdom Kings, and Heavenly Beings arranged in perfect harmony.
This article explores the symbolic meaning, spiritual philosophy, and emotional impact of the 3D Mandala, drawing from the author’s personal experiences, including a moving encounter during the special exhibition commemorating 1200 years of the Shingon sect in October 2023. It offers insights into how each statue embodies a specific role within the cosmic order and how the mandala can evoke a deep sense of peace, reverence, and connection.
Whether you’re a beginner curious about Buddhist art or someone seeking spiritual calm through sacred spaces, this guide will help you appreciate the profound beauty and meaning behind Toji’s unique mandala world.