奈良・長谷寺に安置された、
木造 高さ約10メートルの
長谷寺式(はせでらしき)
十一面観世音菩薩立像
(じゅういちめん かんぜおん ぼさつ りゅうぞう)
――この観音さまの圧倒的なスケールと、
十一の顔それぞれに宿る慈悲と救済の想いは、
「見る者の心を静かに包み込み、安らぎと希望を与える存在」です。
右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に水瓶を持ち、
蓮華や岩座に立つという独特の造形は、
“現世に生き、苦しみに応える観音”としての強い信仰と、
深い象徴性を併せ持ちます。
筆者は2025年秋の特別拝観で、
静かな堂内で観音さまの「御御足(みあし)」にそっと触れ、
十一のお顔に見守られながら過ごす時間
――それは、日常の喧騒から離れ、
心を整えるための特別なひとときでした。
荘厳さと優しさが調和するこの場所で、
“また会いたくなる観音さま”に出会える
貴重な体験をしました🙏✨
この記事では、
この十一面観世音菩薩立像の魅力を、
✔︎ 造形
✔︎ 表情
✔︎ 鑑賞ポイント
を中心に、やさしい言葉で丁寧にご紹介します。
「仏像はよく分からない…」という方にも、
安心して読んでいただけるガイドです。
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奈良・長谷寺とは|花の御寺に立つ大観音尊像

奈良・桜井市にある長谷寺(はせでら)は、
四季折々の花に包まれる「花の御寺」として知られています。
春の牡丹、初夏の紫陽花、秋の紅葉
——そのすべてが境内を彩り、
訪れる人々の心を穏やかにしてくれます。
しかし、この寺の真の魅力は、
本堂に安置された高さ約10メートルの観音さま
——【本尊】十一面観世音菩薩立像(重要文化財)にあります。
長谷寺式 十一面観世音菩薩とは

本尊の十一面観世音菩薩立像は、日本最大級の木造仏。
高さ約10メートルもの壮麗な立像で、
「長谷寺式十一面観世音菩薩」と呼ばれる独自のスタイルを持っています。
正式名称
- 仏像の正式名称:十一面観世音菩薩立像
(じゅういちめん かんぜおん ぼさつりゅうぞう) - 像の呼称:長谷寺式十一面観世音菩薩
(はせでらしき じゅういちめん かんぜおんぼさつ) - 寺院名称:海光山慈照院長谷寺
(かいこうざん じしょういん はせでら)
由来と歴史
奈良時代の721年、徳道上人が楠の霊木から二体の観音像を造立。
そのうち一体が長谷寺に祀られたと伝えられています。
現在の本尊は室町時代(1538年)に
大仏師・運宗によって再造されたもので、
重要文化財に指定されています。
文化的・宗教的意義
- 長谷寺の十一面観音は霊験あらたかとされ、
古くから諸国の人々の信仰を集めてきました。 - 「花の御寺」と呼ばれる長谷寺は、
季節ごとの花々とともに参詣者を魅了し、
平安時代以降『源氏物語』『枕草子』などの文学作品にも登場しています。
長谷寺式 十一面観世音菩薩の特徴

一般的な十一面観音と異なり、
長谷寺式には独自の造形と深い信仰的意味が込められています。
- 右手に錫杖(しゃくじょう):通常の十一面観音は
施無畏印や与願印を結ぶのが一般的ですが、
長谷寺式は地蔵菩薩の持ち物である錫杖を手にし、
人々を導き救う象徴とされています。 - 左手に水瓶(すいびょう):水瓶には蓮華が挿してあることも多く、
清めと救済の力を現します。 - 方形の磐石(岩座)に立つ:普通の仏像は蓮華座ですが、
長谷寺式は特有の台座である「大磐石」という四角い岩座を用い、
大地に根付く力強い安定感・協力を象徴します。 - 十一の顔を持つ:頭上に十一面を備え、
それぞれの顔が異なる方向を見つめ、
あらゆる苦しみに応える慈悲を示します。 - 巨大な像容:長谷寺本尊は高さ約10mの日本最大級の木造仏で、
荘厳さと圧倒的な存在感が際立っています。 - 脇侍や光背の意匠:難陀龍王・雨宝童子が脇侍像として配され、
雲文様の彩色や華麗な天衣が施されています。 - 錫杖を持つことで、
観音の持つ「救済」「遊行」の徳に地蔵菩薩的要素が加わっています。 - 方形の岩座も、民衆に寄り添う地上との強いつながりを表しています。
この様式は全国の長谷観音信仰へと広まり、
「救済・安定・現世利益」の祈りを象徴する信仰として受け継がれています。
長谷寺式十一面観音は「救済、安定、現世利益」に強い祈願を寄せた
奈良時代からの独自信仰が、
造形美としても表現されている点に大きな特徴があります。
菩薩について知りたい方は、こちらをお読みください。
▶︎ 【初心者向け】菩薩とは?その意味や如来との違い、仏像の魅力を解説
圧倒的な存在感と優美な造形

長谷寺の観音さまは、一本のクスノキから彫り出された木造像。
金箔や螺鈿が施された衣の光沢が、灯明の光にやわらかく反射します。
狭い入口をくぐり堂内へ入ると、
薄暗がりの中に金色の観音さまが静かに立つ姿が現れます。
首が痛くなるほど見上げる高さですが、
不思議と威圧感はなく、ただ温かく包み込まれるようなやさしさを感じました。
自らの足で立つ観音さま
拝観の際、お寺の方がこう教えてくださいました。
「光背には支えがありますが、この十一面観音さまには支えがなく、
本当にこの御足(みあし)で立っておられるのです。」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなりました。
千年の時を超え、今もなお自らの足で静かに立ち続ける観音さま。
その姿は、まるで“現世に生きる私たち”への励ましのようでした。
「現世に立つ観音」と呼ばれるゆえんを、
まさに目の当たりにした瞬間でした。
真下から見上げる観音さまのお顔は慈悲深く、
何も語らずとも包み込まれるような温もりを感じました。
仏像を語るうえで欠かせないのが、
鎌倉時代の仏師・運慶(うんけい)の存在です。
仏像の表情や力強さが大きく変わった時代でもあります。
▶ 仏師・運慶の代表作と実際に会える寺院をまとめた記事はこちら
そして仏像の中でも、今なお多くの人の心を惹きつける存在が
奈良・興福寺の阿修羅(あしゅら)像です。
▶ 阿修羅像の表情・造形・魅力を初心者にもわかりやすく解説した記事はこちら
特別拝観|御御足に触れる祈りの時間

秋季特別拝観では、本堂の内陣に進み、
観音さまの御御足(みあし)に直接触れることができます。
手のひらをそっと添えた瞬間、静かに温もりが伝わり、
胸の奥がふっと整うような感覚に包まれました。
しばらく足元で過ごしていると、参拝客が途絶え、
観音さまと自分だけの時間が訪れました。
灯明のゆらめき、香の香り、堂内の木のぬくもり。
そのすべてが心に沁みる、忘れられないひとときでした。
五重塔の令和大修復と今しか見られない景色

現在、長谷寺の五重塔は「令和の大修復」中で拝観は休止されています。
工事の足場越しに塔の姿を少しだけ望むことはできますが、
完成後には新たな美しさで再び訪れる人々を迎えてくれることでしょう。
しかしその一方で、観音さまの特別拝観や宗宝蔵の寺宝公開、
本坊大講堂の一般公開など、今しか見られない貴重な機会もあります。
静かな境内で、ゆっくり観音さまと向き合うには、まさに今が最良の時期です。

長谷寺の十一面観音菩薩は、境内の奥に安置されており、
拝観には階段や坂道を歩くことになります。
実際に訪れる際のアクセス方法は、こちらで詳しくまとめています。
▶︎ 長谷寺へのアクセス方法はこちら
参拝で感じた“心の整い”

ずっと会いたかった観音さまにお会いし、
御御足に触れた瞬間、
言葉にならない感謝と安らぎが心に満ちました。
堂内にはお経の声が響き、十一のお顔に見守られながら、
自然と背筋が伸びていきます。
荘厳でありながら、どこかやさしくあたたかい
——それが長谷寺の観音さまの魅力です。
参拝者の中には涙ぐむ方もいて、
「会いたかった」と静かに祈る姿も印象的でした。
そして少し余談ですが、脇侍の雨宝童子(うほうどうじ)が、
どこか俳優の菅田将暉さんに似ている気がしました😊
長谷寺は山奥にあり、公共交通での移動にも時間がかかるため、
1泊すると心にゆとりをもって拝観できるのでおすすめです。
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奈良・長谷寺|参拝情報
- 総本山 長谷寺
- 住所:〒633-0112 奈良県桜井市初瀬731-1
- 参拝時間:8:30〜17:00(4月〜9月)、
9:00〜17:00(10月11月、3月)、
9:00〜16:30(12月〜2月) ぼたん祭り期間等時間延長あり - 備考:境内・食事処ともにキャッシュレス非対応。現金をお忘れなく。
- 公式サイトにて最新情報をご確認ください。

まとめ|優しさと荘厳が調和する観音さま

奈良・長谷寺の十一面観音菩薩は、ただ美しいだけでなく、
訪れる人の心を静かに癒してくれる存在です。
御御足に触れたときの温もりを思い出すたびに、
「また会いに行きたい」と感じます。
花と信仰、そして人の祈りが響き合うこの場所で、
心が整うひとときを過ごしてみてください。

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