今熊野観音寺|ぼけ封じ・頭の観音さまと青紅葉の鳥居橋

寺院ガイド(所蔵寺院)

五月末の今熊野観音寺(いまくまの かんのんじ)は、
青紅葉がキラキラと輝く、
貸切のような静けさでした。

朱塗りの鳥居橋を渡ったとたん、
ふっと空気が変わって、
心が清らかになっていく——
そんな、異世界へ足を踏み入れたような
感覚に包まれた場所です。

京都・東山、泉涌寺の参道から
ほんの少し折れた先にある、
静かな観音さまのお寺。

有名なお寺のような人の多さはなく、
自分のペースでゆっくり歩けるのが、
なによりの魅力でした。


ここはぼけ封じ・頭痛封じの
「頭の観音さま」として知られ、
西国三十三所の第十五番札所でもあります。

家族の健康を願って、
季節を問わず静かに人が訪れるお寺です。

この記事では、
二度目の参拝でも
・心を奪われた鳥居橋の青紅葉
・圧倒的な存在感の子護大師さま
・家族の健康を願った頭の観音さま(ぼけ封じ観音)
との時間を、体験そのままにお伝えします。


今熊野観音寺|鳥居橋を渡ると、空気が変わる

実はこの今熊野観音寺、
前に泉涌寺を訪れたときに
一度参拝していて、今回が二度目。

朱塗りの橋を渡りながら、
「そうそう、ここに来た!」と、
あの日の感覚がよみがえりました。



このあたりは観光客の姿もほとんどなく、
まるで貸切状態。

あたり一面の青紅葉が
日差しを受けてキラキラと輝いて、
朱塗りの橋とのコントラストが、
はっとするほど美しく、幻想的でした。

しばらく立ち止まって、
ただ景色を眺める。

有名なお寺では、
こんなふうにゆっくり歩いたり、
足を止めたりはなかなかできません。

この橋を渡るだけで、
異世界に入ったような、
心が清らかになっていく心地がしました。

この赤い橋は「鳥居橋(とりいばし)」
今熊野観音寺と
泉涌寺のあいだの谷を流れる、
今熊野川にかかる橋です。



古くこの地に熊野権現がまつられていたことが、
その名の由来と伝わります。

今熊野観音寺には、
いわゆる山門がありません。
この鳥居橋こそが、聖域への入口。

だからこそ、
渡る一歩で空気が変わるのかもしれません。

熊野権現(くまのごんげん)って、なに?

熊野権現とは、
紀伊(いまの和歌山県)の熊野三山——

熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社に
まつられる神さまのことです。

昔の日本では、
「神さまは、仏さまが姿を変えて
この世に現れたもの」と考えられていました。

そんな“神さまでありながら、
仏さまともつながる存在”を
「権現(ごんげん)」と呼びます。

熊野那智の神さまは、
千手観音さまの化身とも伝わります。

熊野信仰にあつかった後白河上皇は、
遠い紀伊まで通うのは大変なので、

この東山の地に熊野の神さまをお招きしました。

それが「京都にできた、新しい熊野」
——「今熊野」という名前の由来です。

観音さまと熊野が深く結びついているからこそ、
ここは“熊野”の名を持つ観音寺なのですね。




今熊野観音寺|子護大師さまの、圧倒的な存在感

橋を渡って参道を進むと、
まず迎えてくれるのが子護大師(こまもりだいし)さま。

そのお姿の存在感に、
思わず足が止まりました。
圧巻、という言葉がぴったりでした。

まわりの青紅葉があまりに美しく、
前を歩いていたご夫婦も
「写真撮ろう」と足を止めるほど。
私もカメラを向けました。

ただ、大師さまのお姿を
写真に収めるのは、
あまりに恐れ多くて——

このときは、紅葉だけを
そっとカメラにおさめました。

子護大師さまは、
子どもたちを護り育んでくださる
弘法大師さまのお姿。

今熊野観音寺を開いたのも、
この弘法大師(空海)だと伝わります。

お子さんやお孫さんの
健康・学業・交通安全を願う方が、
静かに手を合わせていく場所です。


今熊野観音寺|本堂で、頭痛封じの観音さまにご挨拶(弘法大師作・伝の秘仏)

参道の先にある本堂で、まずはご挨拶を。

ご本尊は、弘法大師の作と伝わる
十一面観世音菩薩さまです。

普段は厨子の奥におられる秘仏で、
直接拝むことはできません。

代わりに同じお姿をされた
御前立さまが立たれています。

少し距離があるぶん、
遠くからそっと手を合わせる。
その「会えそうで会えない」感じが、
かえって心を静かにしてくれました。

このご本尊は、熊野権現から
授かった小さな観音さまを胎内におさめ、
弘法大師がみずから彫ったもの、
と寺に伝わります。



後白河上皇の
長年の頭痛を癒したという言い伝えから、
今も「頭痛封じ」「頭の観音さま」として
信仰されています。


今熊野観音寺|頭の観音さま(ぼけ封じ観音)に、家族の健康を願う

本堂のあとは、
大師堂の前におられるぼけ封じ観音さまへ。

親しみを込めて
「頭の観音さま」と呼ばれる観音さまです。

子護大師さまの力強い存在感とは、また違う。
ふんわりとやさしい
雰囲気をまとった観音さまでした。



そのお姿の前で、
家族の健康を思いながら、
静かに手を合わせました。

頭痛封じ・ぼけ封じ・智恵授けの観音さまとして
信仰を集めていて、
「ぼけ封じ近畿十楽観音霊場」の
第一番札所でもあります。

大切な人の健康を願いに訪れる人が、
今日も静かに手を合わせていく場所です。


菩薩についてもっと知りたい方はこちら
▶︎ 菩薩とは|種類・如来との違い・京都奈良で会える代表作


今熊野観音寺|静かに「心が整う」、青紅葉の寺

滞在は20分ほど。

そのあいだにすれ違った参拝の方は、
私のほかに3組ほどでした。

これだけ美しい場所が、こんなにも静か。
それが今熊野観音寺の贅沢さです。

境内はとても広く、
医聖堂や五智水など、
まだまだ見どころが残っていました。

でもこの日は時間と体力の限界で、ここまで。
「次はもっとじっくり回りたい」と、
後ろ髪を引かれながら橋を戻りました。

こうして無理なく歩いて、
また会いに来たいと思える体でいられるのも、
続けている体づくりのおかげかもしれません。

寺社巡りを長く続けるために、私が体を整えている話はこちら


今熊野観音寺は、
西国三十三所の第十五番札所であり、
ぼけ封じ近畿十楽観音霊場の第一番、
洛陽三十三所観音霊場の第十九番でもあります。




御朱印をいただきに、
巡礼で訪れる方も多い札所です。

巡礼の札所でありながら、
観光地の喧騒とは無縁。

青紅葉の美しさのなかで、
ただ静かに自分と向き合える——
心を整える時間を求める人に、
そっとおすすめしたいお寺です。


今熊野観音寺|拝観・アクセス

新那智山 今熊野観音寺(真言宗泉涌寺派)
住所:京都市東山区泉涌寺山内町32
拝観時間:8:00〜17:00
拝観料:境内無料
札所:西国三十三所 第十五番/ぼけ封じ近畿十楽観音霊場 第一番
※拝観時間などは変わることがあります。
最新情報は公式サイトでご確認ください。

アクセスは、市バス「泉涌寺道」バス停から徒歩約10〜15分。
JR・京阪「東福寺」駅からも、歩いて向かえます。




同じ泉涌寺エリアには、
楊貴妃観音や運慶ゆかりの三尊で知られる泉涌寺(せんにゅうじ)や、
丈六のお釈迦さま(運慶・湛慶の作と伝わる)を
間近で見上げられる戒光寺(かいこうじ)もあります。

あわせて巡ると、
静かな仏像さんぽが一日楽しめます。

京都駅からの詳しい行き方や、
戒光寺・泉涌寺・東福寺をまとめて歩く順番は、
エリアのアクセスガイドにまとめています。
▶ 帰りの新幹線まで、静かな仏像の寺をゆっくり巡る|泉涌寺エリアのアクセスガイドはこちら


おわりに

今熊野観音寺は、
有名なお寺の華やかさとは違う、
「静けさ」そのものが宝物のような場所でした。

鳥居橋を渡って空気が変わる、あの瞬間。
ぜひ一度、ご自身の足で味わってみてください。

仏像は、いつも心に静かに響いてくれます。
あなたの「会いに行きたい」の、
最初の一歩になれたらうれしいです。






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