京都・六波羅蜜寺の宝物館には、
時代も仏師も異なる二体の地蔵菩薩が、同じ空間に静かに安置されています。
・鎌倉時代の力強さを感じる
仏師・運慶(うんけい)作と伝わる「夢見地蔵(ゆめみじぞう)」と、
・平安時代のやさしさを体現した
仏師・定朝(じょうちょう)作と伝わる「鬘掛地蔵(かつらかけ じぞう)」。
その中でも、見る人の心にそっと寄り添うような存在が、鬘掛地蔵です。
左手に毛髪を持つという珍しい姿と、今昔物語集に語られる切なくも温かい説話を持つこの地蔵菩薩は、仏像初心者でも「忘れられない一体」になる存在です。
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六波羅蜜寺の鬘掛地蔵とは
鬘掛地蔵は、京都・六波羅蜜寺に伝わる木造地蔵菩薩立像で、平安時代中期(11世紀頃)の作とされ、定朝作と寺伝されています。
像高は約151cm。すらりとした立ち姿に、穏やかで慈悲深い表情が印象的な仏像です。
最大の特徴は、左手に毛髪の束を持っている点です。この珍しい姿から「鬘掛地蔵(かつらかけじぞう)」と呼ばれるようになりました。
宝物館(令和館)で出会う、静かな存在感
現在、鬘掛地蔵は六波羅蜜寺の宝物館(令和館)に安置されています。
L字型の展示空間の一角に立つその姿は、華やかさよりも「静けさ」が印象に残り、自然と足を止めて見入ってしまいます。

定朝らしさが感じられる造形の見どころ
鬘掛地蔵は、平安時代を代表する仏師・定朝の作と伝えられる仏像です。
定朝の仏像に共通するのは、見る人を安心させるようなやわらかく、包み込むような雰囲気です。
- なだらかな体の曲線
- おだやかで感情を押しつけない面相
- 彩色と截金(きりかね)を用いた上品な表現
強い主張はないものの、そっと寄り添うような佇まいに、平安仏ならではの美しさを感じることができます。
「伝・定朝作」とされる理由
鬘掛地蔵は定朝作と寺伝されていますが、銘文などの直接的な証拠はなく、学術的には「伝・定朝作」として扱われています。
それでも、平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像に代表される定朝様式と共通する点が多く、平安中期の作風とよく一致しています。

今昔物語集に語られる鬘掛地蔵の説話
鬘掛地蔵が広く信仰される理由のひとつが、『今昔物語集』に記された説話です。
貧しい母娘の孝行譚
貧しい母と娘が暮らしていました。
母が亡くなった際、娘は葬儀を行うお金がなく、自らの髪を切って売り、ようやく費用を工面します。
しかし、髪を買った男は「血が付いている」と言って返品を拒否。
途方に暮れた娘は、六波羅蜜寺の地蔵菩薩に髪を掛け、母の成仏を祈りました。
すると奇跡が起こり、地蔵菩薩の左手が現れて髪を受け取ったと伝えられています。
この出来事から、地蔵菩薩は「鬘掛地蔵」と呼ばれるようになりました。
この説話は、地蔵菩薩の「孝行を報いる慈悲」と「葬送・冥福」のご利益を象徴し、
六波羅蜜寺の地蔵信仰の基盤となっています。
悲しさと温かさが同時に残る物語
この説話は、ただの奇跡譚ではなく、孝行を見守る地蔵菩薩の慈悲を静かに伝えています。
悲しさの中に、どこか救われるような温かさを感じる物語です。

運慶作と伝わる「夢見地蔵」との見比べ
六波羅蜜寺の宝物館では、鎌倉時代の仏師・運慶作と伝わる地蔵菩薩坐像(夢見地蔵)と、鬘掛地蔵を同じ空間で見ることができます。
- 運慶:写実的で力強く、人間味のある表情
- 定朝:静かで優美、理想化された慈悲の姿
同じ地蔵菩薩でありながら、時代と仏師の違いがこれほどまでに表れる点は、仏像鑑賞の大きな魅力です。
ぜひ、二体を行き来しながら見比べてみてください。
紅葉シーズンは特に混雑するため、早朝や平日の拝観がおすすめです。
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六波羅蜜寺で鬘掛地蔵を拝観するという体験
夢見地蔵と鬘掛地蔵は、宝物館のL字型展示空間の端と端に安置されています。
その距離を歩くことで、自然と「時代を行き来する体験」が生まれます。
華やかな仏像ではありませんが、気づけば心が惹きつけられ、静まり、ゆっくりとした時間が流れていく——。
鬘掛地蔵は、そんな感覚を与えてくれる仏像です。
六波羅蜜寺全体の参拝情報やアクセスについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
▶ 六波羅蜜寺の見どころ・参拝情報はこちら

まとめ|そっと寄り添う、平安のやさしさ
鬘掛地蔵は、強い印象を与える仏像ではありません。
しかし、見終えたあとに静かに心に残る、不思議な魅力を持っています。
運慶の力強さと、定朝のやさしさ。
その両方に出会える六波羅蜜寺で、ぜひ鬘掛地蔵にも目を向けてみてください。
私自身、運慶・定朝という好きな仏師の地蔵像を、
六波羅蜜寺
という一つの空間で拝観できた体験は、忘れられない時間になりました😊
鬘掛地蔵はこんな人におすすめ
- 心がちょっぴり疲れている人
- 仏像初心者
- ひとりで静かに向き合いたい人
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