千本釈迦堂(大報恩寺)の六観音菩薩|如意輪観音に心惹かれて

寺院ガイド(所蔵寺院)

はじめに|千本釈迦堂で出会った静かな力強さ

京都・上京にある大報恩寺/だいほうおんじ(通称:千本釈迦堂/せんぼんしゃかどう)は、素朴で落ち着いた佇まいの中に、古くからの信仰と磨き抜かれた仏像美が残る寺院です。

数ある仏像の中で私が特に惹かれたのは「霊宝館(れいほうかん)」に安置されている六観音菩薩(ろくかんのんぼさつ)像の六体と、その中でもひときわ印象的だった如意輪観音(にょいりんかんのん)でした。本記事では、仏像の見どころ、私の鑑賞体験、拝観情報、撮影のコツまでをまとめます。

六観音菩薩像(概要)——六つの観音が織りなす物語

大報恩寺の六観音菩薩像は仏師・定慶作、鎌倉時代の六観音群像として国宝級の文化財です。

この六観音は「聖観音・千手観音・馬頭観音・十一面観音・准胝(じゅんでい)観音・如意輪観音」の六体で構成され、全像が完存し、近年国宝に指定されました。

六観音の特徴

  • 貞応3年(1224年)、肥後別当定慶作と像内銘と納入品により確定しています。
  • 聖観音・千手観音・馬頭観音・十一面観音・准胝観音は等身大の立像(像高約173~180cm)、如意輪観音のみ坐像(像高約96cm)です.
  • 木の素地仕上げ(彩色や漆箔なし)で、等身大・玉眼入り。すべての像胎内には関係する経巻(納入品)がありました。
  • 本来の安置寺院は不明ですが、江戸初期まで北野経王堂(現在の北野天満宮南側)に伝えられており、1670年に大報恩寺へ移されました。

信仰的意味と現存価値

  • 六観音は六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)の輪廻それぞれを救うとされ、とくに中世以降、多くの六観音群像が造立されましたが、鎌倉彫刻で一具全てが現存する例は全国でもきわめて稀です。
  • 台座・光背も当初のままで伝存状態が非常に良好なことが評価されています。

千本釈迦堂に伝わる六観音菩薩像は、それぞれ異なる姿・表情で人々を見守る六体の観音さまです。六体が揃うことで、さまざまな願いや悩みに寄り添う姿勢が立ち現れ、まとまって拝観することで一層の迫力と物語性を感じられます。

  • それぞれの観音が持つ印相・持物・顔の表現を比較すると、作者の意図や信仰の幅が見えてきます。
  • 六体が並ぶ配置は、鑑賞者を中心に「包み込む」ような構成になっており、視線の誘導が巧みです。

如意輪観音坐像(概要)

大報恩寺(千本釈迦堂)に伝わる六観音菩薩像のうち、如意輪観音は唯一の坐像であり、像高は約1メートル弱です。他の五体は立像ですが、如意輪観音像のみ坐像であるため、台座を高くして群像としてのバランスを取っています。

造形上の特徴

  • 欅(カヤ)材の寄木造で、彩色や漆箔は施さず木肌仕上げとなっており、素朴ながらも量感あふれるプロポーションが際立ちます。
  • 六観音群のなかでも如意輪観音は、静かな知性と慈しみを感じさせる表情。左足を曲げた半跏趺坐(はんかふざ)で、両手に如意宝珠や法輪を持つ伝統的なポーズです。
  • 坐像である分、上体や腰のひねりや膝の張り出しで、動きのあるバランス感が追求されています。

信仰的意味

  • 如意輪観音は、六道のうち「天道(てんどう)」を救済する存在とみなされます。
  • あらゆる願い(如意)を叶え、人々に福徳と知恵を授ける観音として信仰されてきました。

千本釈迦堂の如意輪観音坐像は、六観音群像のなかでも非常に重要な彫刻的・信仰的価値を持つ坐像です。

鑑賞のコツ——六観音をより深く味わうために

  • 全体の配置を確認:まずは六体を遠目で眺め、配置や目線の流れを把握すると個々の違いが見えてきます。
  • ディテール観察:顔の表情、手の形、衣のひだ、持物(宝珠や羂索など)を順に見ると鑑賞が深まります。
  • 時間をとる:特に惹かれた仏像があれば、静かに時間をかけて向き合ってみましょう。短時間の巡礼では得られない発見があります。

如意輪観音に惹かれた理由(私の鑑賞体験)

六観音の中で、私の心を掴んだのは如意輪観音でした。以下がその理由です:

  • 動きのある造形:如意輪観音の身体表現や衣の流れには躍動感があり、静かな堂内でも「物語が今も続いている」ように感じられました。
  • 手のしなやかさと印相:如意輪の手の所作は繊細でありながら力強く、見る者の目を引きつけます。
  • 表情の細やかさ:穏やかさの中に凛とした意思が見え、慰めと覚醒の両方を感じさせる不思議な魅力がありました。

私はしばらく、その場を離れられずに如意輪観音と向き合っていました。時間を忘れるほどに惹き込まれ、その後もしばらく心に残る余韻が続きました🙏✨


千本釈迦堂(大報恩寺)で見られる主な仏像

ご本尊

  • 釈迦如来坐像(重要文化財)
    鎌倉時代の仏師、行快/ぎょうかい(快慶の弟子)作。高さ約90cmの寄木造で玉眼入り、右手施無畏印、左手与願印で、肉身部は黒漆仕上げ。衣部は漆箔(きんぱく)が施された秘仏。本堂の内陣須弥壇の厨子に安置されていて、通常は秘仏として扉が閉じています。

釈迦如来坐像は、千本釈迦堂の信仰と歴史を象徴する中心仏です。

主要文化財仏像

  • 六観音菩薩像(国宝)
    1224年、肥後別当定慶作。聖観音、千手観音、馬頭観音、十一面観音、准胝観音、如意輪観音の6体の木造像で、彩色や漆箔を施さない素地仕上げ。六道を救済するとされる重要な群像。
  • 十大弟子立像(重要文化財)
    釈迦の高弟10名を表す像で、快慶作。老年、壮年、若年像が含まれ、保存状態も良好で霊宝殿に常設展示されています。

その他の見どころ

  • 千手観音立像(重要文化財)
    平安時代の彩色一木彫像で、寺の創建以前の古仏。霊宝殿で常時見学可能。
  • 誕生仏などの小像や**工芸品(太鼓縁など)**も所蔵されています。

千本釈迦堂は国宝建築の本堂とともに、鎌倉時代の名工たちによる貴重な仏像群の宝庫であり、多様な仏像を見られる寺院です。

拝観情報

  • 所在地:京都市上京区(千本釈迦堂/大報恩寺)
  • ご本尊の釈迦如来像は秘仏のため、通常は厨子の扉が閉じられていますが、年に数回の御開帳期間に間近で拝観可能です。
  • 霊宝殿は常時開館しており、六観音や十大弟子像を含む多くの重要文化財を落ち着いて鑑賞できます。
  • 参拝料:入山・境内の参拝は無料/本堂・霊宝館入場につきましては有料

※拝観料・時間は変更されることがあります。訪問前に大報恩寺(千本釈迦堂)の公式情報を確認してください。


霊宝館参拝料:600円(2023年10月時点)

アクセス方法|京都駅から

京都駅から千本釈迦堂(大報恩寺)へのアクセス方法は主に市バス利用が便利です。

  • 京都市営バス50系統 「京都駅前」から乗車し、約23〜32分でバス停「上七軒」下車、そこから徒歩約3〜4分で千本釈迦堂に到着します。
  • 他にも、京都市営バスの10系統や203系統も「上七軒」停留所を経由しますが、京都駅からは50系統が直通です。
  • 嵐電「北野白梅町駅」から徒歩約15分でもアクセス可能です。北野白梅町駅からは今出川通りを東に向かい、「上七軒」交差点で旧七本松通を北へ歩くルートです。

バス停「上七軒」からの徒歩は道案内標識もあり、わかりやすいです。

周辺の立ち寄りスポット

  • 北野天満宮や平野神社などの古刹群 — 京都らしい寺社巡りを続けたいときに。
  • 上七軒通り周辺の散策 — 昔ながらの町並みや小さな寺院が点在します。ランチやスイーツを食べたい時にもオススメです。

まとめ

千本釈迦堂のご本尊・釈迦如来の威厳、六観音が織りなすまとまり、そして如意輪観音の持つ生き生きとした表現──どれもがそれぞれ異なる魅力を放っていました。特に如意輪観音に感じた「動き」「表情」「手の所作」は、仏像が単なる静物ではなく、今もなお語りかけてくる存在であることを教えてくれます。仏像鑑賞が好きな方には、ぜひ足を運んでじっくり向き合ってほしい場所です。

オンラインで再び出会える|千本釈迦堂のバーチャルミュージアム

実際に訪れるのが一番ですが、公式サイトのバーチャルミュージアムも素晴らしく、まるで再びその場で仏像を前にしているような感覚でした🙏✨

千本釈迦堂の公式サイトには「バーチャルミュージアム(ビデオライブラリー)」が公開されています。
実際に拝観した後にアクセスすると、再び御仏像と向き合っているような臨場感を味わうことができました。
六観音菩薩や如意輪観音の姿を、動画でじっくりと鑑賞できるので、訪問前の予習や、旅の余韻を楽しむのにもぴったりです😊

▶︎ 千本釈迦堂 バーチャルミュージアムはこちら

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おわりに|仏像を通して心にふれる時間を

仏像の世界は、本当に、奥深くて、美しくて、人の心に静かに響くものだと思います。

そこには、言葉にしきれない感動や、目の前の仏像から伝わってくる優しさ、強さ、そして静けさがあります。

それを理解できる人は少ないかもしれないけれど、私が発信し続けることで、「なんかいいかも」って思ってくれる人が、きっと少しずつ増えていくーーー

仏像の魅力を、もっともっと、世の中に伝えていけますように🙏✨

そんな思いを込めて、このブログを書いています😊

🇺🇸 English Summary (英語要約)

At Senbon Shakado (Daihoonji Temple) in Kyoto, I was deeply moved not only by the principal statue of Shaka Nyorai but also by the Six Kannon Bodhisattvas enshrined there. Among them, the Nyoirin Kannon especially captured my heart with its graceful form and serene presence. Surrounded by these sacred figures, I felt a profound sense of peace and connection. This visit reminded me of how Buddhist statues are not just works of art, but also guides that inspire calmness, reflection, and inner healing.

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