はじめに|京都・奈良で感じた“心が整う旅”を、今度は地元・福岡でも

これまでこのブログでは、京都や奈良の寺院で出会った仏像の魅力を中心に、「心が整う旅」を綴ってきました。
静かな堂内で仏像と向き合う時間は、忙しい日々の中でふっと呼吸が深くなるような、私にとって大切なひとときです。
そんな中でふと気づいたのは、地元・福岡にも、同じように心が落ち着く神社やお寺がたくさんあるということ。
これからは、京都・奈良での「心が整う旅」を原点にしながら、地元・福岡で出会う神社仏閣の魅力もシリーズとして発信していきます。
その第1弾として訪れたのが、福岡市博多区にある弘法大師ゆかりの寺「東長寺(とうちょうじ)」です。
東長寺とは|弘法大師が開いた福岡最古の寺院

福岡市博多区御供所町にある「南岳山 東長寺(なんがくざん とうちょうじ)」は、806年(大同元年)に弘法大師・空海が日本で最初に創建したお寺で、九州最古の真言宗寺院です。
寺号の「東長寺」には、「東の地に真言の教えを長く広めたい」という願いが込められています。
入口に立つ「南岳山」の山門には、堂々とした三門の左右には、毘沙門天と持国天。
例年2月に行われる節分祭は室町時代から伝わる伝統行事。七福神やお多福、赤鬼、青鬼が豆まきに登場し大いに盛り上がり、毎年多くの参拝客でにぎわいます。
福岡の中心地・博多駅から徒歩圏内にありながら、境内に一歩足を踏み入れると静かな空気が流れ、時間の流れがゆるやかに感じられる場所です。
本堂|平安時代の千手観音菩薩像(重要文化財・秘仏)

東長寺のご本尊は、本堂に安置されている平安時代の作「千手観音菩薩像(せんじゅかんのんぼさつぞう)」。この千手観音像は、槙材による一木造で高さ約80cm。平時は拝観できませんが、年に一度だけ(法要の際)御開帳が行われます。この像は福岡市内でも特に重要な仏像のひとつです。
千手観音(重要文化財・秘仏)のほかにも、弘法大師(秘仏)や不動明王も安置されています。寺院の案内や寺伝によっては弘法大師(空海)や不動明王像も本尊のひとつとして伝えられていますが、信仰・拝観・文化財指定の観点では現在の本堂を代表するご本尊は千手観音菩薩です。
福岡大仏|高さ10.8m、日本最大級の木造如来坐像

東長寺といえば、2階の大仏殿に安置された「福岡大仏」。
高さ10.8メートル、重さ30トンの檜造りで、1992年(平成4年)に完成した日本最大級の木造大仏です。
穏やかな表情の如来像の背後には、数百体の小仏が刻まれた光背が広がり、堂内全体が柔らかな光に包まれています。
大仏の台座の下には「地獄・極楽めぐり」の小道があります。
地獄絵を見た後、暗闇の通路を進む体験は、少し怖さを感じつつも、出口に近づくと極楽の光が広がり、心が安らぐ瞬間を迎えます。
途中の「仏の輪」に触れれば極楽へ行けるとも伝えられています。
参拝料は「地獄・極楽めぐり」を含めて100円。
※撮影不可のエリアです。
おもかる地蔵で運試し体験
福岡大仏のある東長寺の大仏殿内には、「おもかる地蔵」と呼ばれる小さなお地蔵さまが祀られています。両手でその仏像をそっと持ち上げてみると——。その重さが「軽く感じる」か「重く感じる」かによって、願いごとの成就や運気を占うことができると伝えられています。
これは、“おもかる石”の信仰に通じる民間信仰で、感じ方の違いが心の状態やご縁のタイミングを映すともいわれます。参拝の際、親子連れの方が楽しそうに体験されている姿も見られました。
体験料の記載はありませんが、お賽銭箱が設けられていました。体験を希望する場合は、拝観時にスタッフや受付の方へ確認されるのがおすすめです。
六角堂|回転式の仏龕をもつ珍しいお堂

市の文化財に指定されている、珍しい六角形のお堂「六角堂」。
内部の仏龕(ぶつがん:仏像を安置する厨子)は回転式になっており、六体の仏像が安置されています。
毎月28日の不動護摩供や、秋の「博多ライトアップウォーク」の時に開帳されます。
外から見ても端正な造りで、季節の光が差し込むと六角の影が地面に美しく映えます。
五重塔|福岡で唯一の五重塔

福岡市内で五重塔があるのは、この東長寺だけ。
平成23年に完成した新しい塔ながら、どこか懐かしい静けさをまとっています。
総高25.9m、奈良吉野や高知四万十の檜材を78トン使用した純木造建築です。
- 総高:25.9m
- 構造形式:純木造三手先
- 御本尊:大日如来
- 屋根瓦:美濃焼の耐寒瓦(約17,850枚)
- 相輪の伏鉢には、空海が持ち帰ったと伝わる仏舎利(釈迦の骨)を納入
聖天堂|108の数珠を回して願う祈り

境内の一角にある「聖天堂」には、十一面観世音・聖天・摩利天が祀られています。
ここでは、鈴や鰐口の代わりに「願供養念珠」が掛けられており、願い事を唱えながら108個の数珠をひとつひとつ回してお参りします。
祈りの音と数珠の感触が、心を静かに整えてくれる時間になります。
境内の雰囲気と見どころ
「地獄・極楽めぐり」では、初めての時は何も見えず通り抜けましたが、2度目でようやく「仏の輪」に触れることができました。暗闇の中で光に包まれるような、不思議な安心感。静かな体験の中で、自分の心の灯りを感じる時間になりました。
境内には朱色の五重塔、弘法大師像、福岡藩主黒田家墓所(市文化財)、手入れの行き届いた庭園などがあり、四季折々の景観が楽しめます。
春には桜、秋には紅葉が彩りを添え、訪れるたびに違った表情を見せてくれます。
都会の真ん中とは思えない静けさの中で、心がふっとやわらぐ――そんな瞬間に出会える場所です。
夜の東長寺を彩る「博多旧市街ライトアップウォーク」

東長寺は、毎年秋に開催される「博多旧市街ライトアップウォーク」の対象寺院のひとつです。
境内が幻想的な光に包まれ、昼間とはまったく違う表情を見せてくれます。
今年(2025年)は、10月31日(金)〜11月3日(月・祝)の開催予定。
チケットは前売り制で、電子チケットを購入しておくとスムーズに入場できます。
オンラインで簡単に購入できる レジャーチケット購入サイト(アソビュー) からの予約が便利です。
スマホにチケットを表示するだけで入場できるので、旅先でも安心です。
幻想的に照らされた大仏や五重塔、静けさの中に浮かぶ光の道──。
昼間とは違う「夜の東長寺」を、ぜひ体験してみてください。
▶︎▶︎ライトアップ2025|博多旧市街ライトアップウォークの詳しい記事はこちら
東長寺 基本情報
- 住所:福岡市博多区御供所町2-4
- 創建年:(伝)大同元年(806年)
- 山号:南岳山(なんがくざん)
- 正式名称:東長密寺
- 御本尊:千手観音菩薩像(重要文化財・秘仏)
アクセス・拝観情報
- 拝観時間:9:00〜17:00(大仏拝観は16:45受付終了)
- 拝観料:無料(大仏拝観:100円・「地獄・極楽めぐり」含む)
- 御朱印:1階寺務所にて授与
- 最寄駅:地下鉄空港線「祇園駅」1番出口すぐ(博多駅から徒歩約10分)
- 駐車場:あり(約15台:台数に限りあり)


訪れて感じた「心が整う」瞬間

堂内の静けさ、木の香り、光に包まれる大仏さまの穏やかな表情。
観光地の賑わいから少し離れて静かに座っていると、心の中にやわらかい余白が生まれるようでした。
「遠くまで行かなくても、すぐそばに“心が整う”場所がある」――そう気づかせてくれた、福岡・東長寺でした。
まとめ|昼も夜も魅力あふれる東長寺へ

- 弘法大師が創建した、九州最古の真言宗寺院。
- 日本最大級の木造大仏「福岡大仏」は必見。
- 「地獄・極楽めぐり」や、「おもかる地蔵」体験ができる。
- 博多駅から徒歩圏内でアクセス良好。
福岡大仏の穏やかな表情に癒され、夜は光に包まれた幻想的な世界へ──。
東長寺は、時間帯によってまったく違う表情を見せてくれる特別な場所です。
旅のタイミングが合えば、「博多旧市街ライトアップウォーク」の開催期間中に訪れてみてはいかがでしょうか。
チケットは アソビュー(asoview!) での事前購入が安心・便利です。
🇺🇸 English Summary(英語要約)|Tochoji Temple, Fukuoka
Located in the heart of Hakata, Tochoji Temple was founded by Kobo Daishi (Kukai) in 806 and is known as the oldest Shingon temple in Kyushu. The temple houses several sacred treasures, including the Fukuoka Great Buddha—one of Japan’s largest wooden seated Buddhas—and the hidden Thousand-Armed Kannon (National Important Cultural Property).
Visitors can experience the famous “Hell and Paradise” passage beneath the Great Buddha, a symbolic journey from darkness to light. The temple grounds also feature a five-story pagoda, the unique Rokkakudo Hall, and a peaceful garden that changes beautifully with the seasons.
Just a short walk from Hakata Station, Tochoji offers a quiet spiritual escape in the middle of the city. It’s a place where you can feel your mind settle—reminding us that a “heart-calming journey” doesn’t always require going far.
Next, I’ll introduce Shofukuji and Jotenji—two more sacred places of peace in Hakata.