仏像の特徴 〜如来(にょらい)編〜
仏像の中でも、最も基本的な存在である「如来」。
今回は、如来の種類や特徴、見分け方などをわかりやすくご紹介します。
いろんな「如来」
仏像として最初に造られたのは、「悟りをひらいた釈迦」をモデルにした「釈迦如来」です。
その後、仏教の教えの広がりとともに、さまざまな如来が造られるようになりました。
① 釈迦如来しゃかにょらい|全ての仏像のはじまり:釈迦の姿

- 実在した人物・釈迦をモデルにした、すべての仏像の原点。
- 装飾品を一切身につけない、質素な姿。
- 説法する姿が一般的で、右手を上げて「施無畏印」、左手を下げて「与願印」を結ぶことが多い
- 他に誕生仏、苦行像、涅槃像など、釈迦の生涯の場面を表現したものも存在します。
📍代表作:京都・清涼寺「釈迦如来立像」、奈良・法隆寺金堂「釈迦三尊像」など
② 薬師如来やくしにょらい|人々の病気や苦しみを癒し、健康と幸福をもたらす仏

- 東方・浄瑠璃国の仏さま
- 薬壺(やっこ)を左手に持つ:薬壺の中にはあらゆる病や苦しみを癒す霊薬が入っているとされます。
- 右手は施無畏印(せむいいん):手のひらを前に向けて上げ、恐れを取り除く印相を結びます。
- 他の如来像と同じく、装飾品を身につけない質素な姿
- 日光・月光菩薩を脇侍にした三尊形式が多い。
📍代表作:奈良・薬師寺「薬師如来坐像」、京都・阿弥陀堂「薬師如来立像」など
③ 阿弥陀如来あみだにょらい|極楽浄土へ導く仏

- 西方・究極の楽園「極楽浄土」の仏さま
- 印相(手の形):もっとも一般的なのは「阿弥陀定印」で、両手の親指と人差し指を輪にして組み、膝の上で結びます。また、極楽浄土へ迎えに来る姿を表す「来迎印」もよく見られます。
- 他の如来像と同じく、首飾りや冠などの装飾品はなく、質素な法衣のみをまといます。
- 観音菩薩・勢至菩薩と三尊形式で祀られる。
📍代表作:京都・宇治「平等院鳳凰堂 阿弥陀如来坐像」など
④ 大日如来だいにちにょらい|密教の中心・宇宙そのものを象徴する仏

- 宇宙の中心・真理の象徴:密教では宇宙そのもの・真理そのものを仏格化した存在とされ、他の仏(釈迦如来、阿弥陀如来など)は大日如来の化身と考えられています。
- 菩薩のような装い:他の如来像が質素な姿で表されるのに対し、大日如来像は宝冠や装身具(瓔珞、臂釧、腕釧など)を身につけ、髪を高く結い上げた姿で表現されます。これは古代インド王族の姿を模したもので、如来でありながら菩薩のような華やかさが特徴です。
- 螺髪(らほつ)ではなく、髪を結い上げています。
- 坐像が基本:多くの場合、蓮華座に坐った坐像で表されます。
- 智拳印(金剛界)または法界定印(胎蔵界)を結ぶ。
📍代表作:奈良・円成寺「大日如来坐像」など
ちなみに私は、仏像の中で不思議と「大日如来」に惹かれます。華やかさの中に凛とした強さを感じるのです。
今回、記事を書く上で知ったのですが、なんと!私の干支の守護本尊は「大日如来(だいにちにょらい)」だそうです。
▶︎ 干支別にあなたを守る仏様「守護本尊」についてはこちらの記事で詳しく解説しています
大日如来は密教世界観の中心に位置する根本仏で、宇宙そのものを象徴し、私の干支の人々を守護するとされているとのこと。私は本能的に求めていたようです。鳥肌、、、たちました。
「仏の三十二相さんじゅうにそう」とは?
如来像には、「仏の三十二相」と呼ばれる、仏さま特有の32の身体的特徴があります。
これは、長い修行とたくさんの徳を積んだ結果、見た目にあらわれる特別な印です。
- 足下安平立相(足の裏が平坦である)
- 足下二輪相(足の裏に千輻輪の模様がある)
- 長指相(手足の指が長い)
- 足跟広平相(かかとが広く平ら)
- 手足指縵網相(手足の指の間に水かきがある)
- 手足柔軟相(手足が柔らかい)
- 足趺高満相(足の甲が高く肉付きが良い)
- 伊泥延腨相(ふくらはぎが鹿のように美しい)
- 正立手摩膝相(直立した時に手が膝まで届く)
- 馬陰蔵相(陰部が腹の中に隠れている)
- 身広長等相(身長が両手を広げた長さと等しい)
- 毛上向相(体毛がすべて上向きに生えている)
- 一一孔一毛生相(毛穴ごとに青色の毛が1本ずつ生え、右巻きに渦を巻く)
- 金色相(身体が金色に輝いている)
- 丈光相(身体から一丈の光を放つ)
- 細薄皮相(皮膚が滑らかで塵がつかない)
- 七処隆満相(両手・両足・両肩・項の七カ所が盛り上がっている)
- 両腋下隆満相(両脇の下が引き締まっている)
- 上身如獅子相(上半身が獅子のように堂々としている)
- 大直身相(体がまっすぐで大きい)
- 肩円好相(肩が丸く美しい)
- 四十歯相(歯が40本ある)
- 歯斉相(歯並びが良く揃っている)
- 牙白相(歯が雪のように白い)
- 獅子頰相(頬が獅子のように広い)
- 味中得上味相(味覚が非常に優れている)
- 大舌相(舌が広く長い)
- 梵声相(声が美しく響く)
- 真青眼相(瞳が青く澄んでいる)
- 牛眼睫相(まつ毛が牛のように長い)
- 頂髻相(頭頂に肉髻がある)
- 白毛相(眉間に白い渦巻き毛がある=白毫相)
こうした特徴は人間離れした神聖な姿であり、仏さまが特別な存在であることを示しています。
さらに、三十二相を細かく説明したものが「八十種好」で、両者を合わせて「相好」とも呼ばれます。
まとめ
- 如来は仏像の中で最も基本的な存在で、それぞれに役割や印相、姿の違いがあります。
- 大日如来だけが特別に装身具をまとい、宇宙の中心として表されます。
- 「仏の三十二相」は、仏さまの功徳と修行の証として現れる特別な身体的特徴です。
仏像に向き合うとき、その姿のひとつひとつに深い意味と物語があります。
名前や形だけでなく、その背景にある仏教の世界観や、人々の願いを知ることで、より心に響く「仏像との出会い」がきっと待っています。
次に仏像を訪ねるときは、ぜひ「どの如来だろう?」「どんな意味があるのかな?」と心を寄せてみてくださいね。
「仏像が好き」「ひとりでゆっくり心を整えたい」と思う誰かに届きますように🍀
🇺🇸 English Summary(英語要約)
This article introduces the four major types of Nyorai (Tathagata) statues in Japanese Buddhism: Shakyamuni, Yakushi, Amida, and Dainichi Nyorai. Each Nyorai represents a different aspect of Buddhist belief:
- Shakyamuni Nyorai is the historical Buddha and the origin of all Buddha statues.
- Yakushi Nyorai is the Buddha of healing, holding a medicine jar and associated with present-world benefits.
- Amida Nyorai resides in the Pure Land and welcomes all beings who chant his name.
- Dainichi Nyorai is the cosmic Buddha in Esoteric Buddhism, symbolizing the universe itself and often depicted with ornate jewelry unlike other Nyorai.
The article also explains the “32 Major Marks” (Sanju-ni-so)—physical characteristics said to appear only on a fully enlightened being, reflecting their long spiritual cultivation and virtue.
This beginner-friendly guide helps readers recognize key visual elements and deepen their understanding of Buddhist art.