京都・六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)の地蔵菩薩坐像(じぞうぼさつ ざぞう)は、鎌倉時代の名匠・運慶(うんけい)作と伝わる重要文化財です。
「夢見地蔵(ゆめみじぞう)」とも呼ばれ、若々しい表情と力強い造形、そして深い祈りが込められた像内納入品が大きな見どころです。
本記事では、実際に拝観した体験談を交えながら、仏像初心者にもわかりやすく魅力を解説します。
実は六波羅蜜寺では、もう一体、時代も表情も異なる地蔵菩薩に出会うことができます。
六波羅蜜寺で出会える2体の地蔵菩薩
六波羅蜜寺の宝物館(令和館)では、
平安時代と鎌倉時代を代表する名仏師による 2体の地蔵菩薩像を、同じ空間で拝観することができます。
- 鎌倉時代|運慶作と伝わる坐像
内側に力を秘めた量感ある造形と、夢に現れた地蔵を彫ったとされる逸話から 「夢見地蔵」とも呼ばれています。
▶ 地蔵菩薩坐像(夢見地蔵)の見どころはこちら (この記事です。) - 平安時代|定朝作と伝わる立像
穏やかで優しい表情と、左手に毛髪を持つ姿が印象的な「鬘掛地蔵」。 説話に基づく深い地蔵信仰を今に伝えます。
▶ 鬘掛地蔵の由来と見どころはこちら
同じ宝物館内で、
平安のやわらかな慈悲と鎌倉の引き締まった写実性を 体感できる点は、六波羅蜜寺ならではの大きな魅力です。
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六波羅蜜寺の地蔵菩薩坐像とは
六波羅蜜寺の地蔵菩薩坐像は、鎌倉時代の名匠・運慶作と伝えられる木造坐像で、現在は寺内の宝物館「令和館」2階に安置されています。
もとは運慶一門の菩提寺である十輪院の本尊でしたが、火災の際にこの像だけが救い出され、現在の六波羅蜜寺へ伝えられました。
基本情報
- 像名:地蔵菩薩坐像
- 時代:鎌倉時代
- 作者:運慶作と伝承
- 指定:重要文化財
- 材質:木造(檜材中心・寄木造)
- 像高:約90cm

筆者が実際にお会いして感じたこと(体験談)
約5年にわたり、九州・福岡から時間を見つけては京都・奈良の仏像巡りを続けてきました。
振り返ってみると、無意識に惹かれていた仏像が「運慶作」が多かったことに気づき、今回六波羅蜜寺の地蔵菩薩坐像に会いに行きました。
令和館2階で対面した地蔵菩薩坐像は、とても繊細で若々しい印象でした。
おでこと髪の生え際の自然な表現、引き締まった体つき、そして静かな中に宿る強さ。
「やはり運慶はすごい仏師だな」と、時間を忘れて見入ってしまいました。
運慶の夢に現れた地蔵の姿を彫ったという“夢見地蔵”のエピソードも、この像の内省的な雰囲気と重なり、とても心に残りました。

「夢見地蔵」と呼ばれる理由
この地蔵菩薩坐像は、「夢見地蔵」とも呼ばれています。
伝承によると、運慶が夢の中で見た地蔵菩薩の姿をそのまま彫り上げたとされ、自ら願主となり、父・康慶の菩提と一門の繁栄を祈って造立した像と伝えられています。
単なる名作彫刻ではなく、運慶自身の信仰と祈りが込められた本尊である点が、この像の大きな特徴です。
造形の見どころ|運慶らしさが凝縮された坐像
若々しく量感ある体躯
頬の張り、厚みのある胸や肩など、引き締まった体つきは、鎌倉彫刻らしい写実性と力強さを感じさせます。坐像でありながら、内側にエネルギーを秘めたような躍動感があります。
変化に富んだ衣文表現
衣のひだは左右非対称に波打つように流れ、深い彫りと緩急のあるラインで構成されています。
この「変化のある法衣のひだのまとめ方」は、公式解説でも高く評価されているポイントです。
眉目秀麗(びもくしゅうれい)な表情
穏やかで整った顔立ちながら、わずかに引き締まった口元と頬の張りに、強い内面性が感じられます。
静けさと迫力が同居する表情は、まさに慶派仏像の真骨頂です。
眉目秀麗(びもくしゅうれい)な表情とは…眉(まゆ)と目(め)が美しく整った、端正で優美な顔立ちを表す四字熟語です。中国古典に由来し、容姿が優れ知的で気品ある印象を与える顔貌を指します。仏像では、威圧的でない慈悲深く洗練された表情に用いられ、運慶像の若々しく均整の取れた面相を的確に表現する言葉です。
像内納入品が語る強い信仰
近年のX線・CT調査により、像内には経巻・紙束・小塔(宝塔)・金属容器など、多数の納入品が確認されています。
さらに両脚部内部には、岩座に坐す地蔵を表した小さな印仏が納められており、
「地蔵の中に地蔵が宿る」という、非常に重層的な信仰構造を示しています。
この像が、運慶一門の菩提と繁栄を一身に引き受ける祈りの対象だったことがよくわかります。
定朝作「鬘掛(かつらかけ)地蔵」との見比べも必見
六波羅蜜寺には、平安時代の名匠・定朝作と伝わる地蔵菩薩立像(鬘掛地蔵)も安置されています。
● 優雅で静かな平安的美(定朝作/地蔵菩薩立像(鬘掛地蔵))と、
● 量感ある写実的な鎌倉彫刻(運慶作/地蔵菩薩坐像(夢見地蔵))。
一つの寺で二つの時代様式を見比べられる点は、仏像鑑賞として非常に贅沢な体験です。
とくに説話でも知られる
▶︎ 鬘掛(かつらかけ)地蔵の由来と見どころ
は、事前に知っておくと感動が深まります。
鑑賞時のおすすめポイント
- 正面だけでなく、斜め方向から衣の流れを見る
- 膝前の段差や体幹の張りに注目する
- 定朝様式の地蔵菩薩立像と対比して鑑賞する

六波羅蜜寺では、運慶と定朝という二人の名仏師による地蔵菩薩像を
同じ空間で拝観できます。
鎌倉時代の写実的な運慶作「夢見地蔵」に対し、
平安時代らしい柔和な造形が印象的なのが
▶︎ 定朝作と伝わる鬘掛地蔵
です。
まとめ|運慶の祈りに出会える地蔵菩薩
六波羅蜜寺は、運慶と定朝という二人の名仏師による地蔵菩薩像を、 同じ空間で静かに見比べられる、仏像好きにはたまらない寺院です。
六波羅蜜寺の地蔵菩薩坐像は、若々しい量感ある体躯、繊細で力強い衣文、そして豊富な像内納入品を備えた、運慶様式を体感できる貴重な一体です。
仏像初心者の方でも、「静かに心が整う感覚」や「また会いたいと思える存在感」をきっと感じられるはず。
京都で仏像巡りをするなら、ぜひ時間をとって向き合ってほしい一像です。
紅葉シーズンは特に混雑するため、早朝や平日の拝観がおすすめです。
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六波羅蜜寺(令和館)の参拝情報
六波羅蜜寺は、京都・東山エリアにある由緒ある古寺で、清水寺や祇園からも徒歩圏内に位置しています。
観光地の中心にありながら、境内は比較的落ち着いており、仏像と静かに向き合える貴重な場所です。
拝観時間・拝観料

- 拝観時間:9:00〜16:00(令和館)
- 拝観料:大人 600円(2025年12月時点)
- 拝観場所:宝物館「令和館」2階
※地蔵菩薩坐像(運慶作と伝わる像)は、宝物館・令和館での拝観となります。
所在地
〒605-0813
京都府京都市東山区轆轤(ろくろ)町81-1

六波羅蜜寺へのアクセス方法
六波羅蜜寺は公共交通機関でのアクセスが良く、京都駅からも30分前後で到着できます。
仏像初心者やひとり旅の方でも、無理なく訪れやすい立地です。
京都駅からのアクセス
- 市バス206系統「清水道」下車 徒歩約7分
- 市バス100・110系統「五条坂」下車 徒歩約10分
京阪電車を利用する場合
- 京阪本線「清水五条駅」下車 徒歩約12分
- 京阪本線「祇園四条駅」下車 徒歩約15分
徒歩での立ち寄りがおすすめのルート
清水寺 → 六波羅蜜寺 → 建仁寺 → 祇園
といった流れは、観光・仏像鑑賞・心を整える散策を同時に楽しめるおすすめルートです。
参拝・拝観時の注意点
- 宝物館内は写真撮影禁止
- 館内は静かに鑑賞する
- 混雑時は譲り合って拝観する
- 足元は段差があるため歩きやすい靴がおすすめ
六波羅蜜寺はこんな方におすすめ
- 運慶や定朝作の仏像をじっくり見たい方
- 仏像初心者で、静かな場所から始めたい方
- 仏像を沢山見たい方
- 京都で心が整うひとり旅をしたい方
- 平安と鎌倉、二つの時代の仏像を見比べたい方
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