鞍馬寺の聖観音菩薩|肥後定慶が彫った「山の妖精」

寺院ガイド(所蔵寺院)

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🔍 拝観ガイド|鞍馬寺 霊宝殿(仏像奉安室)

拝観場所本殿金堂から徒歩約6分・霊宝殿3階 仏像奉安室
拝観料霊宝殿 200円(現金のみ)+ 愛山費 500円
拝観時間9:00〜16:00
休館日火曜日
アクセス京都駅から地下鉄+バスで約1時間




毘沙門天に会うために登った、
霧雨の鞍馬山。

その霊宝殿で、私はもう一体、
思いがけず心を奪われる仏さまと出会いました。

毘沙門天の隣に静かに立つ、
聖観音菩薩(しょうかんのん ぼさつ)さまです。

こんなにも険しい山奥に、
これほど美しい観音さまがいらっしゃるとは
——ここまで会いに来て、
本当によかったと思いました。


この記事では、
鞍馬寺の霊宝殿に安置される
重要文化財・聖観音菩薩立像との出会いを、
私自身の体験とあわせてお話しします。

じつはこの観音さまとの出会いには、
私にとって小さな「運命」とも呼びたくなる、
不思議な繋がりがありました。


毘沙門天の隣に立つ、美しい観音さま|聖観音菩薩立像

霊宝殿3階の仏像奉安室。

お目当ての国宝・毘沙門天三尊像のすぐ隣に、
その聖観音さまは並んで安置されていました。

ひと目見た瞬間、息をのみました。

若々しく、華奢で、繊細な線。
とても女性的で、
深い山の静けさの中にすっと立つお姿は、
凛としていて、
それでいてやわらかい。

畳に座って、しばらく見惚れていました。
毘沙門天の力強さとはまた違う、
この観音さまの美しさ。

険しい山道を越えてきた疲れも忘れて、
「ここまで会いに来る価値があった」と、
心から思える時間でした。


運命の髪型|宋風の高い髻(もとどり)

この観音さまに、
私が特別な親しみを感じたのには、理由があります。

高く結い上げた髪
——宋風の高い髻(もとどり)です。

じつはこの春、
私は東京・半蔵門ミュージアムで
運慶作と伝わる大日如来像に、



そして神奈川・浄楽寺で
運慶真作の観音菩薩・勢至菩薩に
出会っていました。

この三体に共通していたのが、
まさにこの高く結い上げた髪型。

装飾的で気品があり、
「この髪型、素敵だな、好みだな」と、
ずっと心に残っていたのです。

▶︎ 運慶作と伝わる大日如来に会った、半蔵門ミュージアムの記録はこちら

▶︎ 運慶真作の観音・勢至に会った、浄楽寺の記録はこちら


そして、そのわずか1か月後。
鞍馬の山奥で出会った聖観音さまも、
まったく同じ髪型をしていたのです。

離れた場所で出会った仏さまたちが、
一本の線でつながったような
——ちょっとした運命を感じた瞬間でした。


作者は肥後定慶|運慶につらなる慶派の仏師

あとで知って、
さらに運命めいたものを感じたのが、
この聖観音の作者です。

足ほぞに残された銘から、
1226年(嘉禄2年)に
肥後定慶(ひごじょうけい)が造立し、
1229年に鞍馬寺に納められたことがわかっています。

像高は約180センチ、
ヒノキの寄木造で、
玉眼が入った
鎌倉時代の重要文化財です。

この肥後定慶という仏師は、
慶派——つまり運慶の流れをくむ一門で、
運慶の次男が改名した人物とする説もあります。

中国・宋の仏画を日本風に昇華させ、
衣のひだや髪型に独自の表現を追い求めた仏師でした。

私が惹かれた「宋風の高い髻」は、
まさに肥後定慶ならではの美意識だったのです。

私を観音や毘沙門天の世界へ導いてくれた運慶。

その流れをくむ仏師の手によるお像だと知って、
あの髪型への親しみが、
ただの偶然ではなかったように思えました。

▶︎ 仏師・運慶について詳しくはこちら

▶︎ 同じ肥後定慶作の六観音に会える、千本釈迦堂の記録はこちら


「山の妖精」のような、聖観音さま

長身で細身、腰をわずかにひねって立つそのお姿は、
卵形の顔立ちが端正で、
どこまでも気品にあふれています。

私の手元にある
『京都・奈良のお寺で仏像に会いましょう』でも、
この聖観音さまは「山の妖精のような」と
表現されていました。



深い山の静けさの中に
すっと立つ優美なお姿を前にすると、
その言葉にも思わずうなずいてしまいます。

鞍馬の険しい自然と、
繊細で美しいこのお像の取り合わせが、
いっそう心に残りました。

じつは、京都や奈良の仏像をめぐるとき、
私がいつも手元に置いているのが、
この『京都・奈良のお寺で仏像に会いましょう』です。




仏像ごとの見どころを、
やわらかなイラストとともに
やさしく教えてくれる一冊。



鞍馬へ向かう前に読んでおくと、
霊宝殿での対面が
いっそう深いものになりました。


なぜ、毘沙門天の隣にいらっしゃるのか

ところで、武神である毘沙門天と、
優美な観音さまが、
なぜ隣り合って祀られているのでしょう。

じつは鞍馬寺では、
この二尊は深く結ばれた存在とされています。



その理由は、鞍馬寺の本尊「尊天」の信仰にあります。
その物語は、いずれ別の記事で
ゆっくりお伝えできればと思います。


牛若丸が父の姿に重ねた毘沙門天
▶︎ 聖観音の隣に立つ国宝・毘沙門天との出会いはこちら



鞍馬寺の聖観音さまに会いに行きたくなった方へ

霧雨の山を越えた先で、
毘沙門天とともに私を待っていてくれた、
美しい聖観音さま。

写真では伝えきれない気品が、
あの静かな一室にはありました。




もし心が動いたなら、
ぜひご自身の足で会いに行ってみてください。

▶︎ 京都駅から鞍馬寺への行き方(乗換1回・約1時間)はこちら


鞍馬・貴船でゆっくり過ごすなら

鞍馬寺は山深く、
霊宝殿までしっかりと体力を使います。

鞍馬・貴船エリアや京都市内に宿をとって、
心ゆくまで山の時間を味わうのも、
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おわりに

毘沙門天に会いに登った鞍馬山で、
思いがけず出会った聖観音さま。

高く結い上げた髪が、
半蔵門で、浄楽寺で出会った仏さまたちと私を結び、
そしてその作者が運慶につらなる肥後定慶だと知って
——いくつもの糸が、
この山奥で一本に束ねられたような気がしました。

仏さまに会いに行く旅は、
思いがけないつながりや出会いを連れてきてくれます。




この記事が、
あなたが鞍馬の「山の妖精」に会いに行く、
小さなきっかけになればうれしいです。


鞍馬寺の霊宝殿(鞍馬山博物館) 拝観情報

  • 京都府京都市左京区鞍馬本町1074-2 鞍馬山霊宝殿(鞍馬山博物館)
  • 拝観時間:9:00〜16:00
  • 休館日:火曜日
  • 拝観料:大人200円(現金のみ)








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